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イスラエルの棋友とのWEB対局から(31号,2005年2月26日)

 昨年の秋から今年に掛けて、イスラエルのジープ・シャピロさんと、Chess Variants Game Courier を通じて、2局Web対局を行った。その一局を紹介したい。(寺尾学

 彼とはISCの月例会で一昨年に初めて対局したが、将棋倶楽部24の時間制限が短いためか、月例会に来なくなっていた。昨年の秋にたまたま彼が Game Courierで対局しているのを知り、「ああ、将棋を続けてくれていたんだ」と嬉しくなって対局を申し込んだ。
 すぐに返事をくれ、対局が始まった。Eメール将棋なので、序盤のうちは、四方山話のメッセージを交換しながらとなる。彼は英語よりもロシア語のほうが得意ということだったので、「去年の夏にロシアのノソフスキーさんが900ページ近くあるロシア語の良い将棋の本を出版したよ」と伝えると、「もう持っている。ロシア語の将棋の本はすべて手に入れるようにしている」とのこと。非常に熱心。現在は自分だけで楽しんでいるが、将来的にはイスラエルで将棋の仲間を増やしていく構想をもっているとのことだ。
Fig_1.JPG
 図1は彼との2局目。私が先手。1局目が相矢倉で、彼の棒銀だったので、2局目は別の将棋にしようと思ったが、またしても矢倉棒銀模様なので、右玉にしてみた。イスラエルには右玉戦法の情報はほとんどなく、知識が役に立たないので、彼の力がはかれるのではないかと期待していた。

 1図からの指し手 △9五歩▲同歩△同 銀▲9七歩△8六歩(2図)
Fig_2.JPG
 実は図1の局面では既に作戦負けだと内心思っていた。こちらから攻める手が全然ないので、▽4ニ角‐▽3一玉‐▽2二玉と自陣をさらに整備されていたら戦わずして不利に陥っていた。ただ、まだそういう手待ちのかけひきは難しいのか、端歩の交換の後、すぐに飛車先の歩を突いてきた。これで相手の手に乗っていくことができるので正直ほっとした。

 2図からの指し手▲同 歩 △同 銀 ▲同 銀 △同 角 ▲7七角 △4二角 ▲6六角 △8六歩▲8四歩 △8七銀 ▲8三銀(3図)
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 交換する銀を飛車ではなく、▽8六角と3一にいた角で取ったのは、ジープさんのセンスのよさのあらわれ。本譜の通り、▽4二角と引いて王様の矢倉への入場路ができている。お互いに垂れ歩の手筋から銀の打ち込みのコンビネーション。どちらのパンチが効いているのだろうか。

 3図からの指し手 △6二飛 ▲7七金 △8八銀成▲7四銀成 △8七歩成 ▲6七金寄 △9八歩(4図)
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 お互い、銀を成ったが、ジープさんの方が先にと金をつくった。図の△9八歩のかわりに▽8二歩と先手の歩成りを受ける手もあったかもしれない。とにかく、ジープさん、持ち駒の歩を使うのがうまい。香得しながら、と金をもう一枚作ろうという歩打ちである。

 4図からの指し手 ▲8三歩成 △9九歩 成▲8四角 △6一飛 ▲7二と(5図)
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 こちらもと金をつくり、角を飛車取りに▲8四角とさばき、好調になったかと思った。しかし続く当然の▲7二とに対する勝負手にうならされた。

 5図からの指し手△8九と ▲6一と △5五桂▲6二と  △4七桂成 ▲同 金 △3一玉(6図)
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 驚いたことに飛車を見捨てて、△8九とと桂馬をとり、▽5五桂と金銀両取りをかけてきた。飛車を見捨てたのは好判断で、駒の損得にこだわって▽5一飛と逃げると、▲同角成 ▽同角 ▲7一飛と打たれ、次の▲6二との活用が厳しいので、かえって先手の攻めを加速させてしまう。と金で飛車を取らせるほうが攻めが重くなるのだ。ジープさんはチェスの経験者だが、このへんの駒の損得にこだわらずに、攻めのスピードを遅らせるのを優先した手の選択はどのようにして覚えたものであろうか。誰にも教わらずにこのような選択ができるのはおどろきである。また、6図の最終手△3一玉も「王の早逃げ八手の得」を地でいく手で、このへんは好手連発である。

 6図からの指し手 ▲6八金 △7八と▲5八金△8六角 ▲7五角△同角 ▲7一飛△2二玉▲7五成銀 △6九角 ▲4八金寄 △6八と(7図)
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 お互いに角を交換する合間に、私は左側の金を自玉の近くに呼び寄せる。ジープさんもついに矢倉に入城し、いよいよ寄せ合い。駒割は飛車と銀香の2枚換えで優劣は微妙、王の固さはジープさんがやや有利だが、駒のはたらきは、後手の右側の桂香が残っているのと、8筋の成り銀とと金がやや重い形なので、私がやや有利。ただ先手は▽5五桂があるので桂馬を渡しにくいのが難点。最後の▽6八とは確実な手だが、私としてはかわりに▽5八銀を心配していた。

 7図からの指し手 ▲4一角 △4二金引▲5二と △4一金 ▲同 と △5八と▲2四桂(8図)
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 ▲4一角は3二の金を取って▲3一金からの送りの手筋での詰めろ。当然の△4二金引に角を逃げずに▲5二とと手に乗って離れていたと金に活をいれて後手玉に迫る。△5八とに手筋とばかり▲2四桂と打ってしまったが、ここは当然、▽6九飛と飛車と角を刺し違えて相手のと金を遅らせなければいけなかった。

 8図からの指し手 △同 歩▲同 歩 △1二銀(9図)
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 ▽1二銀が痛恨。ここは▽2四同銀と取るのが正解だった。▲同飛車は▽2三香が絶好打になるので、▲4二とと引くつもりであったが、その瞬間に、▽4八と▲同金 ▲4七角打ち以下の頓死があったのに気づいていなかった。ここは局面が複雑になっていてジープさんも読みきれなかったのかもしれない。

 9図からの指し手 ▲3一と △4二銀 ▲2三金 △同 金▲同歩成 △同 銀 ▲3二と △同 玉 ▲2一飛成 △4三玉▲2三飛成 △3三金 ▲3二龍引 △5二玉 ▲4一銀(10図)
Fig_10.JPG

 ▲3一とで必死がかかった。局面がわかりやすくなるまで指してジープさんの投了となった。最後に勝ちの場面があっただけにジープさんにとっては惜しい一局だった。
 海外にもいろいろな強さの方がいる。実力伯仲の相手と指すのが面白いのはどこでもいっしょなので、さまざまな強さの方がインターネットで海外の方と将棋を指してもらうのが普及につながると考えている。
Game Courier の使い方など、わからない点はお教えしますので、対局してみたい方はぜひともお申し出ください。

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