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ニューヨーク第3回将棋大会の報告(49号、2010年2月20日発行)

 2008年11月天童の国際フェステイバルにはじまり、2009年8月の上海、そして11月のニューヨークとここのところ国際化をうたった将棋大会が連 続して開催されました。またLadies Holly Cup の決勝戦が11月5日に上海の「花園飯店」でおこなわれました。こうした国際化の流れは偶然とは言えず、最近の将棋界の動向を踏まえたものと思われます。
 いずれにせよこうした情勢をISPSの立場から、この目で確かめたかった私は、11月13日全日空機でニューヨークへ向かいました(宇都宮靖彦

 今回は第3回将棋世界大会(英文ではThe Third Shogi World Championship Tournament)と銘打っており、ラガーデイア空港のすぐ近くの瀟洒なホテルで11月14日~15日の両日世界各地からの選手や地元アメリカの各支部からあつまった総勢51名[子供大会は除く、また各地の予選大会を含めると総勢400人参加]が参加して行われました。顧みれば2000年に第1回世界将棋大会が成功裏に開催され、第2回大会を次年度に鋭意準備していた矢先に9月11日のテロリストの事件が起き、中止のやむなきに至りました。爾後中断していましたが、第1回の当事者であるニューヨークの将棋クラブ(日本将棋連盟ニューヨーク支部)の人たちが再びたちあがって今回大会を開催にこぎつけられたと聞いております。ただ今回もサブプライムローン問題やリーマンブラザースの破錠などの未曾有の経済問題が米国経済を直撃しており、その中で準備を進められた関係者の皆さまには深く敬意を表するものであります。

 さてこうした大イベントをとりしきるのは、ニューヨーク将棋クラブのトップ林稔さん同じく副会長の荻原茂孝さんです。古武士の風格のある林さんは大会の期間中ずうっと半纏風の上っ張りに身を固めて、お忙しいだろうに細かい相談にものっておられました。荻原さんはISPSの古くからの会員で本職は弁護士さんです。流暢な英語を駆使して、大会ではもっぱら司会、進行役を努めておられました。

 大会の方は1日目は招待選手以外の選手による予選がおこなわれており、招待選手はもっぱら日本からやってきたプロ棋士相手の指導将棋をうけていました(屋敷九段、石川七段、近藤六段、伊藤(真)四段、伊藤(明)野田沢女流)。ただ下馬評では、どうも今回は予選から勝ち抜いてくる選手が強そうだとの噂で、事実決勝はアメリカ国籍で日本からやってきた小木ポールさんとブラジルに将棋指導に渡ってから50年という烏山久夫さんの実力者同士(いずれも招待選手ではない)の戦いとなりました。

 

烏山さんは小野ゆかりさん(招待選手、アマ女流名人)カウフマンジュニアなどの強敵を倒しての決勝進出です。また小木ポールさんは準決勝で元奨で前回の優勝者江越克将さんを破っています。

 

小木さんは埼玉県代表として平成21年度アマ名人戦全国大会に出場し、なんと準々決勝まで勝ちすすんだという強豪で、将棋クラブ24でレーテイング2,700点以上というからいずれトップアマをめざす、いや既にその域にたっしつつある新進の一人といえましょう。
さすがのベテラン烏山さんもこうすべくも無く敗れましたが、最近の日本アマ棋界における序盤作戦の進歩に「今更穴熊を勉強する気にもならんしー」とぼやいていました。
話は変わりますが、ISPSからは最近では初めてアメリカを訪れたわけですが、我々の従来の認識では、アメリカには独特の日系社会があり、アメリカ各地に支部がありますが、大半が日系人中心であること、その運営も日系人が担っていると考えていました。したがってISPSの従来ヨーロッパ、中国など現地のヨーロッパ人や中国人を直接対象にした普及のやり方とは一味違ったものと受け止め、アメリカ将棋界はその歴史があり、それぞれ尊重しながら今日まで参りました。

 

ただ我々もHIDETCHIさんのYouTubeによる英語の将棋教室を中心に活動をしてゆくうちに、南部のアメリカの人たちの中にも共鳴する人が現れてきます。

 

たまたまミシシッピー州のメンフィスで将棋をしているグループから、ニューヨーク将棋クラブへ連絡が入り、荻原さんや石田さん(小生の滞在に関しお世話になりました)が出かけて、児童の指導にあたるなどの情報も入りました。(詳細は将棋世界1月号に記載されています。)
それでは今後は情報交換をみつにしましょうということになりました。またとりあえず、「かけはし」46号のHidetchiさんのYouTubeによる将棋教室に関する記事を10部ほどコピーして持参したので、参加者の中から日系人や日本語の読める外国人を選んで説明する機会を持ちました。

 

今回参加者の中で目立ったのは、ブラジルなどの南米勢でした。ブラジル将棋連盟はその昔大山名人が力を入れられて、現地から師範派遣の要請があった時、専門家に適当な人が見つからず、早稲田をでて地方銀行に勤めていた烏山さんに白羽の矢が立ったと聞いています。それから幾星霜 早稲田の烏山くんはブラジル代表ロベルト高島さんとともに我々の前に姿を現してくれました。
またブラジルから現在はチリに移住して学生、学童中心の将棋普及活動をつづけている江越さん(最近連盟のチリ支部を設立支部長に就任)は、HIDETCHIさんのYouTubeの将棋教室については南米ではスペイン語が全てですよとの意見でした。
その後帰国して調べてみると、HIDETCHIさんの将棋教室は、すでにスペイン語訳への翻訳が有志により進められており、なんと対応が可能ではないかという返事が返ってきました。
ニューヨーク将棋クラブ(日本将棋連盟ニューヨーク支部)といい、ブラジル将棋連盟(日本将棋連盟ブラジル支部)といい、いずれも日系人を中心に強固な地盤を持っています。これ等のかたがたのご協力によりさらに一層の普及が進めば嬉しいことです。
とくに昨年5月にはサンパウロに安恵八段石川七段が行かれたとき、ブラジル将棋連盟の斉藤専務理事のご好意で、ポートアレグレの大学で仲間に将棋を教えていた柳田真由美さんのグループを暖かく受け入れてくださったことがあり、こうした積み重ねが将来に続いて欲しいものです。

 

さてここまでは日系人の将棋について述べてきましたが、ここで非日系人の強豪について触れてみましょう。

 

ラリー カウフマン、ランス カウフマンの父子、アラン ベイカー(天童で3位 大学準教授)の3人がいずれも出場し、ランス カウフマンさんは4位に食い込みました。そのほかに小生が対局したことのある実力者に、ベッケルという長考派の米国人がいますが、今回は来ていませんでした。人材の宝庫というかアメリカはなんといってもいろんな能力のある人の多い国です。日系人以外に広がってゆけばそれはそれできっと強い選手が出てくるでしょう。
将来への夢が広がる旅でした。

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