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人物紹介コーナー(50号、2010年10月9日発行)

もう、許建東氏といえば、ISPS会員の多くの人たちは、既にご存知かと思います。ですが、この記念号には、どうしても登場していただかなくてはならぬ人でしょう。上海の将棋普及を、ISPSの発足とほぼ同じ時期に初め、現在、上海に60万人の将棋人口を築き上げています。

20110109_kyokanto1_2  いつもと変わらぬ、ヴァイタリティあふれる姿と気さくさに自然と頬が緩む。挨拶もそこそこに、インタビューに入る。ただ、話し方に以前のような強さは薄れ、落ち着いた雰囲気が漂う。大きな試練を乗り越え、一段落したことによる自信の表れだろう。
 今から15年前、おそらく上海で日本の将棋を知っている中国の人は、極めて0に近い数ではなかったかと思う。それが、現在では60万人と言う数に膨れ上がっている。決して大げさではない。それも許建東氏という一人の人の熱意によるものであるというのは、とても信じられないことだ。
 1988年に日本に留学した。この時、将棋の魅力に取り付かれてしまった。帰国後、1995に上海に将棋同好会を設立。主として学校に働きかけていく。「礼に始まり礼に終る」態度に、勝っても負けても相手を尊重する日本の文化を見、相手の陣に入ると「成る」事ができるルールに、「努力すれば必ず報われる」とのメッセージを読んだ。中国の子供たちに、もしこれらの態度を加えることができるならば、中国の発展に寄与できるのではないかとの想いであった。幸い、中国の学校には、校長の権限で全校生徒に与えるべき一部教科を定めることができる制度がある。一校一校、校長に将棋をカリキュラムに入れることを説いて回った。最初の5年間は、実に大変であったらしい。「将棋」とは何かから説明を始めなければならなかった。やがて、その努力が報われ始め、取り入れる学校が少しずつ増え始めた。将棋を学んだ生徒に、落ち着きが生まれ、成績の向上が認められてきたからだ。現在、350校以上の小中高大学校で、全生徒を対象にカリキュラムに取り入れている。一校と言っても、上海の多くの学校は3000人位の生徒を抱えている。これからも、上海の将棋人口は増え続けていくに違いない。
「許さんは、日本の将棋のどこに惹かれたのですか」と聞いてみた。
「最初は、興味本位でしたが、そのうち、日本文化の真髄に触れた気がしていたのです」
「どういう所にですか」
「例えば、取った駒を使うルールにです。私には日本の持つ協調性、仲間意識の象徴ように」
 独特な感性と、本質を見抜く力の一端に触れた思いがした。続いて言う。
「好きな駒は、歩兵ですね。地味だが、『一歩千金』ということわざがあるように、使い方が技量を分ける。相手陣に飛び込めば、『と金』と言われる最も強い駒になる。日本文化の象徴でもあり、私の生き方の指針でも有りますね」
確実なビジョンの下に、一歩一歩、進めてきた許建東氏の努力は、大きな飛躍の時期に来ていると思える。上海市将棋協会が発足するのも間じかとのことであるし、その後、中国将棋プロ棋戦制度も発足させる企画が着々と進められているとのこと。日本の将棋がしっかりと上海に根付いたことを示すモニュメントとなろう。更なる発展を期待したい。

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