ISPS2年間の歩み-将棋を世界に広める会の現状と今後(6号,1997.10.5)
将棋を世界に広める会(ISPS)が発足したのは1995年5月です。日本の将棋を世界中に普及させたいと考えている将棋が大好きな人達9人が集まりました。それ以前は私一人でそんな会ができたらいいのにと考え、趣意書をこしらえてみたりしていただけでした。(代表 眞田尚裕)
最初の一歩
その年の2月に週刊将棋に、日本の将棋を世界に広めようと1人で叫んでいる人がいるという記事が出ました。新聞の力は大した物でそれ以来「同じ思いなので頑張って欲しい」とか「是非一緒にやりたい」などという声が全国各地から私のところへ集まってきました。これが会の発足の原動力となったのです。その後約1年、当初は将棋の国際普及の現状把握や、会が大きな目標として掲げた、世界中の多くの国が参加する「将棋オリンピック」開催のために今なにから手掛けていけばよいかを調査することなどに時間をかけました。インターネットによる世界大会も検討中です。
徐々に成果も
1996年4月に会報「かけはし」の創刊号を発行しました。これによって会の存在を世に示すことができたと同時に更に沢山の情報が入ってくるようになり会員数も激増しました。
会報5号で詳しくご報告した通り本年(1997)2月にはISPSが主催する初のイベントとして第1回国際将棋交流会を開くことができました。これは以前に将棋連盟が主催して行われていた大山杯国際将棋選手権出場経験者や谷川治恵女流三段の英語による将棋教室のメンバーなども含め20人もの外国人が参加、ISPSの50人と交流しました。将棋の国際普及のために先ず日本在住の外国人将棋ファンのネットワークを強化しようという目的達成に多少とも役立ったことと思います。また4月にはISPSの努力によって中国子供将棋親善使節団の日本招聘が実現しました。将棋連盟が北京で竜王戦を行なってから2年余りの間に北京での将棋熱は加速度的に高まり、来日した3人(実力1級くらい)より強くなりそうな子が北京には大勢いるということです。
これらのイベントの他にISPSが手掛けたこととしては、将棋連盟の海外支部のない国(サモアやチュニジアなど)で将棋を普及させようとしている方への支援、将棋連盟が発行している入門用パンフレット「将棋」の仏・独・西・露・韓国語版の作成、セントメリーズインターナショナルスクール将棋部への講師派遣などがあります。
石の上にも3年という言葉がありますが、ISPSが発足してから2年4ヶ月、世界中に将棋を広めようとする見地からすれば実績は楊枝の頭ほどでしかないかも知れません。しかし本年8月には会員数も230名を越え、会の力は確実に向上しており、これからが序盤の力の出しところと思っています。
さらなる展開
次に今までの経験から国際普及に際しての現状の問題点を列挙します。第1は将棋を外国人に教えようとしている人は沢山いるのだが、横の繋がりが弱いという点です。かなりな数の専門棋士、将棋連盟普及部、将棋連盟海外支部、そして我々の会ISPSやその他個人の方々などみんな国際普及という同じ目的を持って努力しています。にも拘わらず相互の有機的な繋がりが薄いため無駄が有ったり単発的であったり孤立したりしています。より具体的な問題としてはまず外国語で書かれた将棋の本が少な過ぎるという点です。また現状外国では継続的、定期的に将棋を指導してくれる人が少ないと言われています。さらに初めて将棋をやろうとする国では盤駒の入手が困難だという点も意外とネックになっているようです。
以上の問題点を頭に入れながらISPSの今後の方向を考えてみます。「夢はできるだけ大きく、やる事は足元から確実に」が従来からのISPSのモットーです。実際のオリンピックと同じくらいの数の国が参加する「将棋オリンピック」の実現を夢見ながら、ISPSは国際普及に関し、個人ではできない事、将棋連盟でも立場上やりにくい事を大きな受け皿として引き受ける縁の下の力持ちになればよいと思っています。
そこで会として当面やらねばならないことは何かといえば組織の強化拡大と財政基盤の確立です。何か実績になるようなまとまった事をやろうとすればお金がかかります。人手ももっと必要です。目標は、会員を1000人以上にする事、定期的に援助してくれるスポンサーを獲得する事などです。
足腰を固め、同じ思いの人達の力を更に結集し、山積する問題点を共に解決していきましょう。
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