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ロシア親善将棋対局から 六枚落ち2局(14号,2000.12.25)

 5月25日、クチユベイ宮殿で3面指し対局。『バラの学校』の生徒、モスクワからかけつけた強豪、ペテルブルグ代表たちのお相手した。
 ロシア語通の舘裕さんが慣れない記録係を勤めてくださった。生徒諸君は猛烈な早指しであるから、指し手を書きこむことは大仕事、ご苦労様。ここでは六枚落ち2局。短評を記す。
 六枚落ちは、飛車、角、香2枚、桂2枚合わせて6枚落とす。駒落ちはすべて上手が先手、六枚落ちで原田に勝つなら「立派な初段」と認めるつもりであった。(九段 原田泰夫

平成12年5月25日
クチユベイ宮殿
六枚落ち 
・原田 泰夫
・パフムコフ

【初手からの指し手】
▽2二銀 ▲2六歩 ▽8二銀 ▲2五歩
▽3二金 ▲1六歩 ▽7二金 ▲1五歩
▽5二玉 ▲1七香 ▽3四歩 ▲1八飛
▽4四歩 ▲1四歩 ▽同 歩 ▲同 香
▽4三玉 ▲1二香成▽3三銀(第1図)

     <第1図>
14_harada_1.JPG

ここまでは100点

 初めて日本語学校を訪問して六枚落ちで指導した。その折、上手陣の攻略法を示したのでその順で破られた。
上手は・2二銀1枚。下手は1筋に飛車と香の協力で2枚。(数多ければ攻め勝つ)道理、原田が原田に六枚落ちで指している気分で笑ってしまう。とにかくここまでは下手100点満点だ。

【第1図以下の指し手】
▲3八金 ▽5四歩 ▲6八金 ▽7四歩
▲5六歩 ▽7三金 ▲7八銀 ▽7五歩
▲6六歩 ▽7四金 ▲6七金 ▽4五歩
▲7六歩 ▽同 歩 ▲同 金 ▽7五歩
▲8六金 ▽8四歩 ▲7七銀 ▽8五歩
▲9五金 ▽8三銀 ▲8六歩 ▽9四歩
▲9六金 ▽8四銀 (第2図)

     <第2図>
14_harada_2.JPG

想像できない手順

 第1図。次の一手をどう指すか。下手の勝ち方はいくつもある。下手の手順だけを示すと、・2一成香〜・1二飛成〜・1四歩〜・1三歩成、「龍とと金の協力」で金銀を攻め、次に・2三と・同金・1三成香・同金・同飛成を狙う。駒得すれば下手必勝。
 実戦の下手の手順は、将棋を覚えたばかりの幼年原田はこんなものか。70年前の初級時代、現在では想像できない手順。第1図までの100点の指し手から、疑問手、悪手、減点手、指さないほうがいいという手を指している。いちいち解説しにくい順。
 だからこそ六枚落ちの将棋である。

【第2図以下の指し手】
▽同 金 ▲8六歩 ▽8四金 ▲7六歩
▽7八金 ▲9六歩 ▽7六歩 ▲同 銀
▽8八金 ▲7七桂 ▽6四歩 ▲6五歩
▽7四金 ▲6四歩 ▽同 金 ▲6五桂
▽7七角 ▲6八歩 ▽8六角成▲6七銀打
▽6六歩 ▲同 銀 ▽7六馬 ▲6七歩
▽同 馬 ▲6八歩 ▽5八銀 ▲4八玉
▽4九銀成(投了図)
まで77手にて原田の勝ち

     <投了図>
14_harada_3.JPG



下手惜敗

 第2図下手の次の一手は・7九角と引き、・1三角成として・5七馬。『馬は自陣に引け』の形にすれば下手勝てる。
 実戦手順は、2人がかりで下手負けの順を進めた。序盤で「破り方」を知っているので、これから攻防の手筋をおぼえればよい。
 旅行団が寄付した各種の将棋上達法を読んで実戦鍛錬を希望したい。6級と認定。

六枚落ち

・原田 泰夫
・テェリヨーヒン・アンドレイ

 【初手からの指し手】
▽2二銀 ▲5八玉 ▽8二銀 ▲7八金
▽3二金 ▲3八金 ▽7二金 ▲6八銀
▽5二玉 ▲4八銀 ▽3四歩 ▲6六歩
▽4四歩 ▲6七銀 ▽7四歩 ▲4六歩
▽3三銀 ▲4七銀 ▽7三金 ▲2六歩
▽7五歩 ▲5六歩 ▽7四金 ▲8六歩
▽8四歩 ▲8七金 ▽7三銀 ▲5七玉
▽5四歩(第1図)

     <第1図>
14_harada_4.JPG


初対面の下手陣

 下手の少年は独創力がある。
 第1図の駒組みが面白い。4七銀−6七銀型は「ツノ銀」という。牛のツノに似ているからだ。
 5七玉の3段玉に左右の2枚金は初めて。63年のプロ生活で初対面の下手の布陣。この少年は建築家を目指したら成功するのではないかと思った。ほんとうは「金銀二分」型はよくない。

【第1図以下の指し手】
▲7六歩 ▽8五歩 ▲同 歩 ▽同 金
▲7九角 ▽8六歩 ▲7七金 ▽7六歩
▲同 銀 ▽同 金 ▲同 金 ▽8七歩成
▲9六歩 ▽8八歩 ▲7七桂 ▽7八と
▲6八角 ▽同 と ▲同 玉  ▽8九歩成
▲4八金 ▽8八と ▲8五桂 ▽8四銀
▲5七玉 ▽7八と ▲5八金 ▽3九角
▲6七玉 ▽8七銀 ▲3八飛 ▽7六銀成
▲同 玉 ▽7五金 ▲6七玉 ▽6六角成
▲7八玉 ▽8五銀 (第2図)

     <第2図>
14_harada_5.JPG


と金で勝つこと

 歩の衝突場面で、取る手か、取らない手か、まだ分からない。自陣の三段目に「と金」を作らせてはいけない。「と金は金と同じで金以上」相手に取られた瞬間に歩にかえる。
 歩の使い方、と金で勝つこと、駒損をしないことを注意した。序盤の構想をほめたが、1手、1手の価値の差が現れた。

【第2図以下の指し手】

▲6九玉 ▽7六銀 ▲5九玉 ▽9九馬
▲6八金 ▽7七銀成▲6九金 ▽6四香
▲7九金 ▽7八歩 ▲同 金 ▽同成銀
▲同 飛 ▽6六馬 ▲6九銀 ▽6七馬
▲8八飛 ▽4九金 (投了図)
まで85手にて原田の勝ち

     <投了図>
14_harada_6.JPG


今後が楽しみ

 前局と同様に本局も上手は1手、1手迫り、下手は負けを早める順に協力しているような指し方である。経験不足なので仕方がない。
 眠・休・遊・怠・死の言葉を思い出してほしい。遊び駒を作らない、遊び駒を活用すること。適材適所に駒を運用する方は強い。臨機応変、現場処理ができる人はさらに強い。『バラの学校』から日本将棋の秀才、天才の出現はこれからだ。2年後か3年後を見たい。
 本局の少年にも「6級」と認定した。

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