京都で外国人向け将棋教室を開く(30号,2004.12.18発行)
「将棋教室ををやってみませんか。」と女流書家の河原林春陽先生に声を掛けて頂いたのがきっかけでした。先生が京都市の国際交流会館で外国人のための水墨画教室を開いておられ、通訳もどきで顔を出していた今年2月頃のことです。京都とウクライナの首都のキエフとは姉妹都市で、2年前に京都市から文化交流使節団がキエフを訪問しました。そのおりに河原林先生の書に触れてすっかり書道のとりこになったのが、私どもの将棋の友人のウイクトル・チセンコ氏。昨年ウクライナに出掛けた時に「自分の書を先生に見てもらって欲しい」と言われて預かって来て、先生と知り合うことが出来ました。京都に住んでいる者同士がウクライナ人を通じて知り合ったのです。(池谷 孰)
教室の開講を申し込んだところ、新規の教室が優先ということで、無事に会場を割り当ててもらえました。
ISPSの会員で私の将棋の好敵手の観音寺氏に協力を約束してもらいました。二人の実力はともに初段程度。もう少し力のある指導者も必要と思っていた矢先に、河原林先生を通じてやはりISPS会員で京都にお住まいの三段格将棋連盟指導員の大蔵氏に協力を頂けることになりました。
次は外国人への呼びかけ。会館の掲示板の割り当てスペースはA4版一枚分だけ。目に付くように赤でSHOGI CLASS、ライトブルーで将棋と書き、英文で簡潔に内容を書いたポスターを作りました。「無料」と書き入れるのも忘れずに。さらに周辺を黄色く塗って中央を白抜きの駒の形にしました。これで少しは目に付くカラフルなポスターになったかな。案内カウンターに置くチラシも作りました。ポスターに袋をぶら下げてチラシの縮刷版を入れて、これも持ち帰ってもらえるようにしました。他方、会館のホームページでも教室を紹介してもらいました。
そして4月第一土曜日朝10時。いよいよ第一回の開講。果たして受講希望者が現れるのか、三名の指導者が雁首をそろえて待ちました。来ました。来ました。カイゼル髯を生やした長身の青年が。オーストラリアから来た英語の先生、トラビス・ヘンドリックス君。それからインドネシアから京大に留学中のステディ・ワルドヨ君。いずれも将棋は初めてということなので、将棋連盟作成のリーフレット「将棋SHOGI」を使って、駒の名前・動かし方の説明から始めました。 5月になって、スコット・ブラウン君がやって来ました。やはりオーストラリアから来た英語の先生。漢字を勉強しようとやって来て、ポスターに気づき将棋教室に来たとのことでした。チェスが出来るとのことで、駒の動きを教えたところ、たちどころに1手詰・3手詰の問題が解けました。それで8枚落ちから対局を始めました。
熱心にやってきていたカイゼル髯君、土曜日に英語の授業が入ったというので、6月から月2回水曜日にロビーで臨時教室を開くことにしました。
また、6月から年配のフランスの紳士、ジアン・ピエール氏が来るようになりました。奥さんが日本人で、定年になってしばらく日本で暮らすことにしたとのこと。駒の動きを覚えるのに少し時間がかかりましたが、やがて6枚落ちで私に勝つようになりました。もっとも大蔵氏の詰めの指導つきですが。
8月からハドソン・クレス君、9月からはマーカス・ウイリンガンズ君、いずれもアメリカの好青年が熱心に来るようになりました。
10月第一土曜日は観音寺氏と私が高校の同期会で揃って東京に行くことになり、大蔵氏のかっての職場、島津製作所の将棋部の岡崎氏と田中氏に来て頂きました。岡崎氏にはその後都合がつく限り来て頂けることになりました。
4月から9月までで第一期が終わり、10月から第二期に入りました。第一期の延べ参加者数はちょうど50名。重複を差し引いた参加者は20名でした。参加者には都度大蔵氏から盤駒を贈って頂きました。参加者の国籍は来た順にオーストラリア、インドネシア、ベルギー、台湾(中国)、アメリカ、フランス、スイス、マレーシア、メキシコ、韓国。韓国とアメリカから、お母さんが小学生の子供さんを連れて来られたことがありました。子供さんには正式の将棋の指し方の他に駒遊びも教えました。韓国の方は、ソウル郊外にお住まいとのことでしたので、ISPSでは韓国将棋連盟とチャンギと将棋の交流を行っていることを説明し、将棋を続けるために韓国将棋連盟に連絡を取るように薦めました。
最初から熱心に来ていたカイゼル髯のトラビス・ヘンドリックス君、夏には富士登山をして、夜明けがすばらしかったと言っていました。また、宮島に出掛けるなど日本滞在を楽しんでいるようでしたが、ワーキングビザ切れで11月に故郷に戻ることになりました。これから毎月将棋の問題を送ろうと思っています。
現在は詰め将棋を少しやったり、参加者の棋力によって駒落ち、平手を指しています。その際に玉の囲い方の指導を盛り込み始めています。
先日、マーカス・ウイリンガンズ君がインターネットで見つけたと面白い形の詰め将棋問題を持って来ました。私など四苦八苦でしたが岡崎氏は5分とかけずに解いてしまわれました。皆さんも挑戦してみてください。
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