スペインに赴任して将棋を教え始めました(36号,6月17日発行)
マドリードで普及の初手7六歩を着手
今年の3月までイラクのバグダッドで勤務していましたが、1年7ヶ月の勤務を終えて5月のはじめにスペインのマドリードに在スペイン日本国大使館公使として赴任しました。大使館事務所にも毎日銃声や爆発音が聞こえるバグダッドの特殊な環境から来ると、レストランに出かけられ、買い物も普通にできるこうした暮らしが本当に別世界に感じられます。(山田彰)
20年前とは様変わり
スペインについて日本人が持つイメージは、依然として、フラメンコ、闘牛、いろいろな軽食が楽しめるバル、シエスタと呼ばれる長い昼休みと言ったものではないでしょうか。最近は、サッカー(リーガ・エスパニョーラ)が加わったかもしれません。こうしたイメージは、誤りではないかもしれませんが、スペインの伝統的、民俗的な一面でしかないと思います。
スペインは、既にカナダを上回り世界第8位の経済力を持つ先進国でもあるのですが、こうした新しいスペイン、近代的なスペインのイメージは日本にあまり伝わっていないような気がします。
私は、二十年以上前(1982〜84年)にスペインに研修のため2年間滞在していました。二十年もすれば、どこの国でも変わるものですが、スペインの場合は特に90年代から経済成長が著しく、特にマドリードは大きく変わってきました。郊外には次々とマンションが建築され、高速道路がどんどん延びています。中南米や北アフリカからの移民が急増し、マドリードはコスモポリタンな町になっているのです。
スペインで日本について発信するとともに、伝統的なスペインと新しいスペインの姿の双方を日本に紹介していくことが、ここでの我々の大きな仕事の一つです。
さて、スペインにおける「将棋」だが、私の知る限り、欧州の他の国とは異なり、まだ愛好家と呼べる人はほとんどいないようです。
私の古い知り合いで、スペイン人に30年ほど囲碁を教えている三上さんという日本人の方がいます。三上さん自身もアマ強豪だそうですが、多くのスペイン人を有段者に育て、囲碁の世界選手権にも何人もスペイン・チャンピオンを送り出しています。
現在は、マドリードのスペイン広場の近くで、囲碁を打つクラブがあり、会合が週三回(月、木、金)開かれており、毎回10名以上のスペイン人が集まってきます。
囲碁クラブで将棋
囲碁クラブで将棋の対局をする山田理事(右)
マドリードに来てから早速このクラブを訪ねてみました。最初は、将棋の盤駒を持ってくるのを忘れてしまったので、将棋を教えることは断念し、へぼ碁を打ちました。ここのスペイン人と話してみると将棋に関心を持っている者はかなりいるようでした。
駒落ちの変化を熱心に研究中
そこで、翌週、今度は盤駒を二組用意して、将棋の指導をすることにしました。教材については、スペイン語と英語の将棋ルールの文書をインターネットからもってきて、プリントアウトして会場に持参しました。2面指しでの指導を始めましたが、真っ先に関心を示したエドゥアルド君は、既に将棋を知っていて将棋24でも指したことがあるとか。8枚落ち、6枚落ちは手合い違いで負かされました。4枚落ちはいい勝負でしたが、上手の勝ち。なかなか筋がよいので、彼は強くなるのではないでしょうか。
他にその日にルールを覚えた2人と8枚落ちで将棋を指したのですが、一人には負かされてしまいました。チェスができる人はなかなか飲み込みが早い感じです。
もっと将棋の盤駒があればはずみがつきそうです
この囲碁クラブを運営しているスペイン人の方とも知り合って、将棋や囲碁を通じた交流を深めていきたいと話し、持参した盤と駒は、クラブにそのまま寄贈してきました。
スペインに来て、まだわずかですが、将棋をスペインに広める一歩を記せたという気がしています。
ひとこと‐囲碁クラブを将棋普及の拠点に
フランスのカンヌのゲームの祭典で囲碁を出展していたフランス人に聞いたのだが、囲碁のクラブが南仏にはすでに数ヶ所開かれており、定期的に例会を行っているそうだ。山田理事のマドリードからの情報にあるように、囲碁クラブに来る人で、将棋にも興味を持つ人はフランスにもいるとのこと。囲碁クラブとしても、クラブで将棋ができるようにすると、メンバーが増える可能性があるので、将棋を歓迎するところがあるとのことで、盤駒を1セット買い求めた。世界普及で先行している囲碁のクラブは各国にたくさん存在する。それらとうまく連携できるれば将棋の普及にはずみをつけられるのではないだろうか。
最近のコメント