アニメ「しおんの王」がもたらした効果(43号,2008年2月16日発行)
海外の将棋情報ア・ラ・カルト
かとりまさる原作、安藤慈朗作画の将棋マンガ『しおんの王』がアニメ化され、昨年の秋から今年の春にかけてフジテレビ系列で毎週放映中である。同作品は、少女女流棋士が主人公で、ミステリー仕立ての作品である。驚くべきことに、日本でアニメ作品が放送されると、どこからともなく各国語で字幕をつける者が現れ、ハングル、中国語字幕はテレビ放映から24時間以内、英語字幕は1週間以内、その他の主要な言語でも2週間から1ヶ月以内に字幕が付いて、インターネット上で見ることができるような現象が今起っている。それが21世紀という時代である。前世紀とは隔世の感がある。(寺尾学)
「しおんの王」には、当然のことながら毎回将棋のシーンがあり、それを世界中のアニメファンがみていることになる。実数はわからないが、Youtube などの動画共有サイトの見られた回数の数字などから判断して、日本以外でざっと1万人以上10万人未満の人が毎週『しおんの王』を見ていると私は推定している。これだけ多くの海外の人が毎週将棋の番組に触れる機会を持ったのは、歴史上初めてのことであると考えられる。実際、いろいろなことがインターネット上では起っている。
韓国の若手女流囲碁棋士の心情あふれる英語の感想
韓国にチョ・へヨン七段という囲碁の女流棋士がいる。高麗大学に通う学生女流トップ棋士だ。驚いたことに彼女は、英語でブログを書いていた。さらに驚いたことに、そのブログに「『ヒカルの碁』を見ているとき私はハッピーではなかった」「『しおんの王』こそ、私の待ち望んでいたアニメだ」とまで書いているのである。将棋のことはよく知らないという囲碁棋士の彼女がなぜそこまで『しおんの王』に入り込んだのか。それは、主人公が中学生の女流棋士で彼女の境遇と重なり合うところが多く、感じるところが多かったからである。彼女のブログは英語で書かれているため、世界中の囲碁ファンが読んでいる。当然、触発されて『しおんの王』を見るものがさらに世界中に出てくるし、その中のいくらかの割合の者は将棋に興味を持つものと期待される。動画をかなり自由にインターネットで見られる時代になり、アニメの持つ文化伝播力は『ヒカルの碁』が出てきたとき以上に大きくなっている。(このブログのエントリーの URL はhttp://loveku.livejournal.com/22417.html)
将棋のポータルサイトを開設した米国の夫婦
次は、米国の Clement さん。「実際、『しおんの王』を見て、妻と一緒に将棋をやってみることになりました。将棋は簡単ではないですね。でも、楽しくて、興奮する挑戦です」と語る彼は、他の人にも将棋を知ってもらいたいと考え、自身で登録ユーザーが情報を蓄積していく Wikipedia に似たタイプの将棋専門のサイトを作ってしまった。URL は (http://shogiban.net/wiki/)
ハム将棋で将棋を体験
animesuki と命名された、世界のアニメファンが集うフォーラムがインターネット上にある。そこで、番組の開始の少し前から Shion no ou の会議室が立ち上がり、その会議室でアニメを見た感想やコメントが交換されている。また、個人で『しおんの王』の感想を英語で書き綴っているブログもいくつかある。そういう場で、ハム将棋という、ダウンロードすることなくウェブ上だけでコンピューター相手に将棋が指せるアプリケーションが話題になっている。英語の利用法説明もネット上にあるので、アニメを見て興味を持った人が手軽に将棋を実際に指してみることができるようになっている。私の知っている範囲でも、マレーシア、イタリア、米国、メキシコ、イギリスでハム将棋を体験してみたアニメファンが出てきている。(ハム将棋の英語の使用説明の URL はhttp://shogi-shack.net/playhamshogi.aspx)
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