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こも・えすた スペイン将棋便り(44号、2008年7月23日発行)

芽生えてきたスペインの将棋

1.本間六段を迎えての将棋講習会

 日本政府(文化庁)は、日本文化の普及や海外の交流のために、芸術や文化の各分野の専門家を文化交流使として世界各国に派遣しています。かけはし読者はご承知でしょうが、日本将棋連盟の本間博六段はこの文化交流使として昨年9月からパリに9ヶ月間派遣されていて、この5月初旬にマドリードを訪問しました。この機会を活用して、5月8日19時から約2時間にわたり、大使館の多目的ホールで、将棋講習会を開催しました。講習会の参加者は、スペイン人を中心に50名弱でしたが、スペインにおいて将棋の会合のためにこれだけの数のスペイン人が集まったのは、おそらく初めてだったでしょう。(山田彰

 参加者が将棋について理解しやすいように、ルール解説、将棋の戦いの考え方、参考英文・西文ウエブサイト等を記載したスペイン語の資料を準備して、参加者に配りました。講座の冒頭約1時間、本間六段が駒の動かし方等のルール、簡単な詰みの形を解説し、私が通訳と指導補佐を担当しました。その後、駒落ちでの指導対局や参加者同士の対局を行いました。参加者には全くの初心者、チェス協会の関係者、経験者(ほとんどの人が、私がここで教えていたスペイン人です)が入り交じっていましたが、本間六段によれば、一部参加者のレベル(棋力)は、事前に予想していたよりかなり高かったということです。3手詰めですが、回答を知らないと盲点に陥る詰将棋(玉の横に銀2枚、5二角成り、という例の問題)をすぐに解いたスペイン人がいて、私も驚きました。

 直前になってTV放送局(テレ・マドリード)が将棋の講習会の様子を生中継したいと申し込んできました。中継車が大使館にやってきて、約6分間にわたり、将棋講習会の様子やインタビューなどが生中継・放送されました。これは日本と将棋普及の良い広報になったのではないかと思います。講習会の様子は、大使館のHPにも掲載されています。
http://www.es.emb-japan.go.jp/cultura_Shogi_Honma080521.htm

 さらに、本間六段は5月10日、マドリード郊外で開催されたEXPOMANGA2008(マンガ、アニメなどを中心にした日本のポップカルチャーの祭典。3日間で2万人以上の有料入場者があります。)においても、来場者に対して将棋指導を行ってくれました。日本のポップカルチャーに関心を持つスペイン人は、将棋や囲碁といった日本の伝統的ゲームにも関心を持つ人が多いのです。


2.スペインでの将棋普及

 前任地のイラクでは治安情勢のため将棋普及などは夢のまた夢でしたが、スペインでは将棋を普及するべく活動してきました。しかし、英、仏、独など欧州の他の国では、将棋連盟の支部もありますし、その国の人による将棋の組織が既にあるのに対し、スペインではこれまで全くと言っていいほど将棋は普及しておらず、ゼロからのスタートでした。

 この2年間、いろいろな場所で細々と普及活動をしてきましたが、ようやく少し芽が出てきたのかなという気もします。インターネットの発達により、(将棋に限らず、文化一般について)国際的な普及のあり方が変わってきた感じもあります。今では、外国にいる見知らぬ人同士がインターネット上で対局することはごく簡単にできます。将棋に関する外国語の情報はまだまだ少ないですが、数年前に比べれば段違いに増えました。日本文化に関心のある人や囲碁の愛好家の中に、将棋に関心を向ける人が少しずつ現れています。

 たとえば、本間六段の訪問の翌週、ウエルバ(アンダルシア州セビーリャ市の少し先の街です。)に行った際には、サロン・デ・コミックという行事の主催者側から将棋講座を開いてくれと要請されたのでした。将棋についてウエルバTVからの取材も受けました。マンガやアニメや日本文化を楽しんでいる現地の団体に将棋のセットを寄付したら、とても喜ばれました。

 まだ、ほんのわずかな人しか認知していませんが、その人たちの間では将棋もクールな日本文化の一部として認識されてきたのかもしれません。

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