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4回目の中国訪問(7号,1998.5.1)

 去年の10月初めに将棋交流を目的に中国を訪問しました。この時期、中国では中国象棋の全国個人戦が開催されます。それに合わせて訪中し、中国全土から集まってくる選手たちに日本将棋を紹介して相互交流を図ろうという訳です。(所司和晴六段(談))

 私が最初に中国に訪れたのは4年半前ですが、それから数えて今回が4回目になります。もっとも象棋の国際試合などで毎年1〜2回は東南アジアへ行ってますので、象棋の選手や関係者と会うのは4回目どころではありません。
 当初は全国個人戦の開催地である福建省の他には北京だけを訪問する予定でしたが、近年将棋が盛り上がっているという上海も急遽訪問先に加えました。人づてに、将棋のプロ棋士からの指導の要望が上海で高まっているという話を聞いたからです。
 北京では、少年宮で将棋を学んでいる子供たちのうち3人が去年の春ISPSの招待で日本に研修に来ました。恐らく実力が大分ついてきたと思いますので再会が楽しみです。
 また、私は象棋自体にも非常に関心があり、全国個人戦は象棋と将棋の相互交流を図るにはうってつけの機会と思いました。中国全土が選手が集まる個人戦で将棋を紹介すれば、象棋の強豪に効率よく将棋を知ってもらえますし、象棋も楽しめます。2年前も蘇州での全国個人戦を観戦しており、その時も良い交流ができました。

少年宮を訪問
 まず最初に訪れたのは北京です。到着した10月1日から出発した4日まで中国では国家の休日でした。通訳の陳さんに出迎えてもらいました。陳さんは将棋を知らなかったので、まず将棋そのものの紹介から始まって、将棋の専門用語などを覚えてもらいました。
 翌日は少年宮へ。まず指導者の李民生氏、生徒代表、通訳の陳さんと将棋を指しました。生徒代表の少年はなかなか強く、4枚落ちでしたがしっかり勝ちました。午後は多面指し。一度に4面から5面で、感想戦などもちゃんと行なって、合計20局くらい指したでしょうか。
 次の訪問地、福建省へは中国棋院の方々と一緒に北京から移動することになっています。そこで10月3日は中国棋院を訪ね、象棋部長王庭文氏と象棋の対局や交流の話などをしました。その後再び少年宮へ戻り、今度は比較的初級の子供を集め大盤解説と十数面指しを行ないました。

昼も夜も将棋
 明くる10月4日に趙国栄氏らと福建省に向け出発です。福建省到着は夜遅くになりましたがそれから多くの選手との宴会が始まりました。福建省での通訳は莊さん。将棋の紹介と用語の説明から始まるのは北京の陳さんと同じです。
 全国個人戦大会は10月6日に始まり16日まで続きますが、私は8日に行われた4回戦までを観戦しました。昼間は大会の観戦、夜は選手たちとの交流という毎日です。女子象棋大師の温さん、福建省の王大師、深圸棋院の朱院長、杭州棋院の陳副主席、昨年個人戦三位の湖北省李選手、蘇州の選手たちや趙氏の地元黒龍江省の選手たちといった多くの方とお会いできました。特に朱院長は深圸に是非交流に来て欲しいとおっしゃいました。
 また象棋の審判を20名以上集め将棋を紹介することもできました。何人かはルールを覚え、実際に指してみたりしていました。

驚くべき上海
 10月9日上海入り。ここの将棋熱には驚かされることになります。出迎えてくれたのは許氏と蒋さん。許健東氏は将棋アマ五段で上海で将棋を普及してくれている中心の方で、蒋さんも指導者の1人です。上海棋院の尹副院長、将棋クラブの張副幹事長を交え交流を深めた後、大世界というところの将棋クラブに行って小中学生と十面指しをおこないました。
 翌日は午前中に姜山中学、午後には新中中学を訪問しました。大盤解説や多面指しで指導対局をしましたがなかなかレベルが高いと思いました。
 出発前にもらった手紙に、上海には将棋を指せる子供が6000人ほどいると書いてありました。本当かなと思っていましたが、将棋を覚えた子供たちは数学がよくできるようになったと学校で評判になり現在上海市のほとんどの小中学校で将棋を教えるようになったそうで、そのため本当に1万人くらいは将棋が指せる子供がいるようです。
 ここまで将棋熱が高まってくるとやはり優秀な子は日本へ留学させてプロ棋士を目指すという目標が芽生えてきます。これは北京の子供たちも同じで、少年宮の李民生氏は今すぐでも日本に留学させたい有望な子がいると言ってました。これらの芽を潰さないために早く将棋留学の仕組みを作る必要があると思います。
 10月11日に帰国しました。振り返ってみると福建省では若い人達にあまり将棋の紹介ができなかったような気がします。全国個人戦よりも全国団体戦の時を狙って交流に行く方がよりよいのかも知れません。

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