国際将棋懇親会(増刊号,1996.12.10)
国際将棋フォーラムお別れパーテイー
山田彰
梅雨の合間の全日空ホテルのセンチュリールームでは、日本語・英語・中国語・スペイン語・フランス語など様々な言葉の会話が交わされていたが、みんなの話題のテーマは「将棋」であった。
既に御承知の通り、6月19、20日の両日東京国際フォーラムにおいて、日本将棋連盟・国際将棋フォーラム実行委員会の主催で、第1回国際将棋フォーラムが開催された。その目玉行事の一つとして、世界27カ国から32名の選手が参加して国際将棋トーナメントが行われた。
将棋を世界に広める会の面々は、勿論国際将棋フォーラムに参加して、各国選手との交歓を行ったのだが、さらにこの機会を利用して翌21日の夕刻にお別れパーティ(国際将棋交流会)を開催した。正直なところどのくらいの方が来てくれるか心配していたのだが、トーナメントに参加した方はほぼ全員出席し、ISPS会員他日本の将棋ファンの方も多く参加した。日本将棋連盟からは所司・滝の両プロ棋士が出席され、滝七段にはご挨拶もしていただいた。 こうして熱気一杯の中で、世界の将棋を愛する人たちが将棋への愛?を語り合ったのである。
各国代表の挨拶などから聞いた各国事情を紹介してみたい。
・ヨーロッパ
トーナメントで3位に輝いたベルギーのマット・カスタースさんによれば、20年位前に福井さんという日本人の方が将棋を教えたのがベルギーでの将棋の始まりではないかという。近年、将棋のプロ棋士がブラッセルを訪問して将棋熱が高まりつつあるという。これからは欧州全体の組織化が課題なので、日本からの支援を期待しているそうだ。
ロシアのウリアノビッチさんは、2〜3年前からロシアでは将棋を指す人が出てきて、今は数十人の単位で将棋を指すロシア人がいるが、日本人の将棋の先生がいないのが悩みであると語っていた。
・アメリカ
米国のフェルナンデスさんは我々にはおなじみで、米国将棋連盟会長である。ニューヨーク・ワシントン・ロス等全米5カ所に将棋クラブがある由で、インターネットを利用した将棋も指されているようだ。ISPSを始め日本の様々な将棋の組織とこれからもっとネットワークを張っていきたいということだ。
・中国
中国の許さんからは、今回のかけはしの別稿で紹介されている上海における将棋の普及についてのスピーチがあった。
・中南米
中南米方面は私の仕事上のホームグラウンドだが、アルゼンティン、ブラジル、パラグアイからの参加があった。ブラジルは日系人の方を中心に将棋が盛んだが、アルゼンティンは意外なことに日系人の方々の間でも将棋はあまり盛んでないようだ。残念、これからの普及を期待したい。
パラグアイのマルチノフさんは、「将棋は文化でチェスは遊びである」と言って将棋への思いを熱く語った。最初は国際協力事業団(JICA)の専門家の方がパラグアイの人に将棋を教えたようだが、今では将棋人口は数十人。マルチノフさんはパラグアイの子供達に将棋を広めたいと話していたので、その夢が実現することを期待したい。
ISPSがこのようなパーティーを開催したことで、日本の将棋愛好家とも語り合える機会が増えたことを各国の選手はとても喜んでいた。彼らの国を訪問したときは是非連絡してくれるようにとも言っていた。各国の選手みんなに楽しんでもらえたと思うし、私にとっても大変楽しいパーティーだった。この後国際交流は六本木での大カラオケ大会に続いていったのだが、しかしその様子は割愛することにしたい。(了)
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