将棋講座番組がハングル字幕でオンエア(第35号、2006年2月25日発行)
ソウルのブレインTVで日韓ペア将棋
1月19日、ソウル中心部から電車で1時間弱ほど西南にある同局の会議室に、見慣れない日本人が集まっていた。ブレインTVは韓国将棋(チャンギ)協会の朴光燮(パク・カンソプ)さんが立ち上げたチャンギ専門のケーブルテレビ。集まっていたのは、所司七段、藤森女流棋士会会長、山田女流三段、矢内女流名人、中倉宏美女流初段という面々。(寺尾 学)
日韓友情年2005
このような豪華なメンバーが揃ったいきさつを説明しよう。昨年は、日韓友情年2005にあたり、両国の間で、様々な文化交流の催しが行われていたが、その流れに乗って、韓国将棋(チャンギ)協会が日本の文化庁に交流の助成金を申請し承認された。通ったのはよいが、認められた助成金が、なぜか日本将棋連盟におりることとなり両者の折衝が始まることとなった。
当初日韓の話し合いはギクシャクとした面もあったようだが、将棋とチャンギの双方に詳しく、両国の言葉に堪能な宋正彬(ソン・ジョンビン)さん(当会会員、韓国将棋(チャンギ)協会東京支部長)が間に立ってからは、ぐんぐん企画が煮詰まっていった。女流棋士とチャンギのプロがペア将棋・ペアチャンギで相互対局、所司七段による大盤解説、韓国で将棋を指す子供を局に呼んでのプロ棋士による生の将棋講座と指導対局、そして、韓国の将棋普及についてのパネルディスカッションの4つが番組収録されることになった。
また、宋さんの翻訳で、囲碁将棋チャンネルの将棋講座番組3タイトル合計52回分にハングル字幕が付くこととなった。これらは、同局で繰り返し放映されるので、韓国での将棋普及に役立つことが期待される。
ただ、ブレインTV側によれば、日本側から番組の台本が無いと連絡されたようで、翻訳番組をまとめるのにずいぶんと時間がかかったという。これまでの将棋講座番組は、外国語化されることは想定せずに撮られてきたと考えられるが、これからは、それを前提とし、台本に基づいた翻訳しやすい番組作りが関係者の方には求められる。
パネルディスカッションも
ペア将棋・チャンギの対局と大盤解説が行われた翌日の20日に、同局の会議室では、招待された小学生6人と、将棋の指導者数名を対象にした大盤を使った将棋講座が行われた。6人のうちには、当会が昨年招待した李正賢(イ・ジョンヒョン)君の顔もあり、皆、出された問題を一生懸命考えている姿が印象的だった。
この講座の後、所司七段はじめ女流棋士4人が多面指しで指導対局にあたった。子供達も将棋指導者も全員2〜3局教えてもらうことができていた。
対局後、子供達は目の前で揮毫された扇子や色紙をプレゼントされ、とても喜んでいた。当会からも、将棋コミックスの「コマコマ」を贈った。言葉がわからなくても、日本のコミックスは人気があるらしく、子供達の手が伸びるのは早かった。
続いてのパネルディスカッションでは、韓国の将棋普及の現状と将来について討論された。朴さんからは、当会から一昨年に川北亮司さん、上田友彦さんを派遣して、将棋の指導者を養成したが、それだけでは足りず、韓国内での将棋の知名度をもっと上げていく必要性が強調され、日本将棋連盟の協力が要請された。囲碁やチェスに比べるとまだまだ将棋の認知度が弱いとのことである。日本側からは、上海でも韓国と同じような障害が初めあったが粘り強く学校にアプローチし続けるうちに、将棋を覚えた生徒の学業成績がよくなることが知られるようになり、各学校に普及が進んでいった例が紹介された。
また、日本でも小学生、中学生のうちは将棋を指すが、年齢が進むに連れ、指さなくなる現象が見られることが説明され、大会の開催を多くするなど、中学卒業後も将棋を指す機会が多く提供されるような工夫が必要との意見などが出された。
いずれにしても、上海の将棋人口が普及開始から10年で12万人に増えた一因は、両国の関係者の相互訪問が頻繁に行われてきたことにある。今回の番組収録を機会に、両国の人的交流がさらに進んでいくことを期待したい。当会としても、現地の日本企業などで韓国の将棋普及を応援してくれるところを見つけるなどのサポートができたらよいと思います。情報をお持ちの方はぜひお寄せください。
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