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カンヌゲームの祭典に参加して(36号,6月17日発行)

将棋の宣伝に適したイベント

 昨年のISPSの理事会でジャック・ピノ−氏から、南仏カンヌの町で開催される「ゲ−ムの祭典」に参加するかどうかの打診がありました。
  カンヌは、ご承知のとおり、映画祭で有名なコ−トダジュ−ル(紺碧海岸)の保養地で,客寄せために種々のイヴェントを行っていますが、いずれもプレステイジの高いものばかりと聞いています。
 「ゲ−ムの祭典」には従来よりチェスや囲碁のほか麻雀、バックギャモン、ブリッジ、ポ−カ−、オセロ、ビリヤ−ドなど多くのゲ−ムが含まれており、前回の例では、約7万人の参加者、観衆が訪れたということです。(宇都宮靖彦

今年が20回目
 「ゲ−ムの祭典」は今回で20周年にあたり、主催者側からピノ−氏に将棋も参加してはどうか、との誘いがあり出来ればチャンピオン級の方も出席して貰えないかとの話もあり、ピノ−氏は森内名人あたりを念頭に折衝していたようですが、2月の15〜19日といえば、順位戦の大詰めにあたり現役棋士はほぼ無理な時期になります。また唯一順位戦に関係のない森内名人も棋王戦の挑戦が決まられたのでこれも難しくなりました。また参加者、観衆の大半はフランス人なのでISPSが表面に出て運営することは、能力の限界を超えることとなります。結局、フランス将棋連盟(日本将棋連盟パリ支部)のエリック・シェイモル氏やフレデリック・ポテイエ氏を中心に運営にあたることになり、ISPSからは、私と寺尾理事が応援として参加することとなりました。

 当初私は森進一の「冬のリヴィエラ」の閑散としたイメ−ジを思い浮かべながら、2月14日成田発英国航空機でロンドン経由ニ−ス(コ−トダジュ−ル空港)へ向かいました。時あたかもトリノ冬季五輪開催中でもあり、予期に反し機中は期末試験を終えた女子大生と短大生で超満員でした。ニ−スからカンヌはバスで30分。当日は取り敢えずカンヌのホテルで一泊。

 将棋のイヴェントは16日から始まることになっているので、15日は2人でニ−スでも見物しようかということになり、国鉄でニ−スの駅を降りると冬のシ−ズンなのにニ−スは多くの日本人も含めて、観光客がいっぱいでした。

 シュロの木に囲まれて南国ム−ドにあふれるプロムナ−ド.デ サングレは、一見お宮の松の近くの熱海の風景を思わせますが、勿論背景となっているホテルはニ−スのほうがずっとゴ−ジャスな感じです。

 ニ−スは人口38万人,高級リゾ−ト地として売り物の海岸を中心とした雰囲気のほかに、シャガ−ルやマチスの美術館などもあり、ゆったりとした休暇を過ごすには適した場所でしょう。
 さて翌16日からは本番開始です。カンヌのホテルを出て、クロワゼット大通りに向かいます。ここは「カ−ルトン」や「マジェステイク」のような高級ホテルが並び、5月の映画祭の時期には、世界中の映画人、スタ−、ジャ−ナリストが集い熱気あふれる場所になります。海岸あたりの風景は、ニ−スと似ていますが、白砂に恵まれているだけカンヌのほうが夏場は海岸で寝そべることができます。寺尾理事は「ニ−スを熱海とすればここは葉山ですよ」と言っていました。「ゲ−ムの祭典」の会場となる「パレ.デ.フェステイバル.エ.デ.コングレ」(5月の映画祭の会場でもある)もこのクロワゼット大通りに面しており、開場前にすでに大勢の人たちが行列していました。

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開場を待ちきれずに並ぶ来場者

 SHOGIのブ−スでは、フランス将棋連盟の人たちが準備に入っており、そこへ我々は日本から持参した販売用の盤駒、普及用の英文パンフレット(いずれも日将連で入手したもの)青野九段の和英対訳本などを陳列、またNHKテレビの羽生、佐藤(康)戦のビデオを用意しました。

 さて来場者は主としてゲ−ム好きの人たちが多く、SHOGIにたいする予備知識(といってもチェスの一種と言った程度ですが)があったり、関心のある人が意外に多いような印象でした。また先生に引率された大勢の小学生がやってきて、苦手のフランス語でベラベラとやられたのには参りましたが、そこは年の功で、将棋をフランス語で説明したチラシ(フランス将棋連盟が用意したもの)を手渡したり、フランス将棋連盟の若手の応援で防戦しました。

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カンヌの「ゲームの祭典」で子供に将棋を教えるポチエ(右)さん

 また放映したビデオは日本語なので、フランス人にとって内容は理解できないわけですが、日本にはこれを職業とする多くの人たちがいるということで、将棋のゲ−ムとしての奥行きを感じてもらったようです。
 通りかかっては立ち止まってみてくれる人が多く、結構なPRになると思いました。次回はフランス語の説明でもつけたら更によいと考えています。

 16,17日は展示と自由対局、18,19日はリヴィエラト−ナメントをやる予定になっており、我々もはじめの2日間もし門前雀羅を張る時は碁やチェスを指しに行こうか、と話していたのですが、お陰で人の流れは絶えず、日本から用意してきた将棋グ−ヅ(一部有料)は全部なくなり、SHOGIのPRの場所としては、きわめて効率的な場所ではないかとの手ごたえを感じました。

よく聞かれた質問
 将棋のル−ルや駒の動かし方のほかに、さまざまな質問がありQ&A風に列挙すれば、 
 Qフランスで将棋を指したいとき、どこへいけばよいのか。
 Aフランスには日本将棋連盟のパリ支部とアルザス支部があります。ただ手近で将棋を指される場合は、以下のゲ−ムサイトにアクセスしてください。
ポ−ランド www.kurnik.orgチェコ   www.brainking.com

 Q駒が漢字で読みにくいが何とかならないか 
 A 我々も本年は初参加であり、準備は必ずしも十分とは思っていません。次回はフランスの人にも分かりやすい駒をお持ちしたいと思っています。今年はこれで我慢してくださいませんか。(日本将棋連盟の普及用英文パンフレットについている紙の駒を手交する。)

 Q日本では将棋で生計をたてているプロがいるそうだが、トッププロの収入はどのくらいか A 年や為替レ−トによって変動しますが、大まかに言って年収1百万ユ−ロぐらいではないでしょうか。

 なお将棋のブ−スの近くには、チェスや囲碁のコ−ナ−があり、チェスは本場だけに黒山の人だかりで、プロらしき人が多面指しで大人気を呼んでいました。囲碁のコ−ナ−では九路盤を多く備えて年少者の指導にあったっていました。(10年以上前から参加、今年は日本人の参加はないとのこと)。

 2日目の夜はフランス将棋連盟の人たちとの会食。席上でエリック・シェイモ−ル氏は,来日中に撮影した桂離宮、修学院離宮などの映像や先般パリを訪れた中原先生、佐藤(秀)先生、近藤先生などの指導対局風景などをパソコンの画面で見せてくれました。シェイモ−ル氏やポテイエ氏はいずれも将棋だけではなく大変な日本通で、従ってパリ将棋支部の人たちもみな難なく日本語の駒で指しこなしていました。

中戸駒はどうだろう
 また後述するオランダのオ−ステン氏など将棋の強いヨ−ロッパの人たちは日本についての造詣も深く心強いのですが、見方を変えれば「ゲ−ムの祭典」に集まってくる人たちは児童も含めて、ゲ−ムそのものに関心のある人たちで漢字の駒で対応することはあまり得策ではないような気がします。
将棋の普及を一部の日本趣味の人たちに限定しないで、将棋のゲ−ムとしての優秀性に着目して、思い切って日本将棋連盟の海外普及用英文パンフレットに近い形のもの、例えば中戸俊洋氏作成の駒のようなもの,(近代将棋4月号28ペ−ジ)を使ってみてはどうでしょうか。

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期間中に開催されたリヴィエラトーナメント

 さて18日19日は週末で遠方よりの参加者も加わりリヴィエラト−ナメントを開催、フランス人のほかオランダから参加したオ−ステン氏(前ヨ−ロッパ選手権者)、ノ−ルウエ−のオルフセン氏に我々2名が加わって総勢9名の大会になりました。小生は申し訳ないことながら、対局時計を押し忘れる悪い癖を連発し不調でしたが、寺尾氏が1位オ−ステン氏が2位、3位が小生ということでシェイモ−ル氏が不参加だったフランス勢は振るいませんでしたが、若い人の中で、将来性のありそうな人が散見され楽しみです。それではまた会う日まで。

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