パリ・カンヌ将棋普及の旅(40号、2007年6月16日発行)
フランスで確かな普及の手応え
女流棋士二人が同行
昨年からカンヌのゲ−ムの祭典で将棋が取り上げられることとなり、ISPSも参加したわけですが、参加者の多いこと、【昨年度約10万人】祭典への参加者が年々ふえていること、かつ参加者のゲ−ムにたいする関心がおしなべて高いことなどから、将棋の普及には格好の場所であるとの印象を持ちました。またフランス将棋連盟が大同団結して,旧アルサスのオズモンドさんやパリのシェイモ−ルさんたちが力をあわせてこの祭典に取り組んでいますので、なんとか応援してあげたいというのが我々の気持ちでした。(宇都宮靖彦)
そこで今年は日本将棋連盟に棋士の派遣をお願いしたところ、安食女流初段、伊藤女流一級お二人の派遣を決めて頂き、ISPSのツア−参加者とあわせて総勢10名で2月20日エ−ルフランス機でパリに向かいました。
パリの日本大使館で将棋のレクチャー
初めの予定では、21日のパリは休養にあて22日からカンヌで仕事をしようと考えていたのですが、パリの日本大使館から21日の午後7時から一般のフランス人を対象に「日本文化としての将棋」というレクチュア−デモンストレイションをやってくれないかとの依頼が参りました。
写真ご参照のように、和服姿の女流2人に実際に将棋をさしていただき、内容は大盤で分かるようにして、講師が将棋とはなにかを説明するというものです。
日本大使館文化広報部に集まった人に将棋の実演を見せる女流棋士お二人
今回のケ−スは当会にとっても初めての経験でしたが、将棋の普及にとっては願っても無い機会なので、喜んでおひきうけしました。
講演の内容は、チェスとの比較、将棋の歴史、日本や海外の将棋事情などとなっていますが、とくに将棋の歴史については当会の会員である尾本恵市先生や木村義徳九段の著作を参考にさせていただきました。この場を借りて両先生には厚く御礼申し上げます。、また当会案をまとめる段階でご注意頂いた鈴木副理事長や山田理事、フランス側の感触をとりまとめられた水谷一等書記官と通訳のゴルジュさん有難うございました。
かくて多くの方のご助力でまとめられた内容は当会の真田理事長によって発表されることとなりましたが、私費でツア−に参加された将棋ジャ−ナリストの山田史生さんが総合司会を受け持ってくださったので質疑応答にも無難に対応することが出来ました。
講演が行われたのは日本大使館広報文化部が凱旋門の近くに持っている、シャンデリアの美しい建物で、将棋の知識のあるゴルジュさんの名通訳で将棋を知らないフランスの方々にも分かりやすかったのではないかと思います。60人ほどの聴衆が熱心に聞いてくださいました。講演のあとは、すしやワインでの立食パ−テイがあり、和服の2人は記念撮影に質問に大人気でした。
短い観光の時間
ところで女流2人はパリの休日を楽しみにしていたと思いますが、このほかに21日の午後1時からやはりシャンジェリゼ通りに面した日本人会の部屋を借りて、パリのフランス将棋連盟の人たちと女流棋士による三面指しの指導将棋が企画されました。将棋の普及の観点からは、充実した1日でしたが、反面あまり見物も出来ず女流には、ちょっと気の毒なことになりました。
わずかに21日の午前中は女流のご要望をいれてル−ブル博物館でモナリザなど鑑賞、パリはやはり芸術の都です。翌22日が移動日兼休養日となり、パリのリヨン駅からTGVにのってアビニヨンに直行、午後は世界遺産法王庁を見物したり、アビニヨンの橋を見ながら写真を撮ったり、とりあえずプロバンスの風光を楽しみながらゆったり過ごしました。
さてここで女流2人と寺尾さんは、フランス国鉄にのりマルセイユ経由でカンヌに向かって出発し、明日からのゲ−ムの祭典に備えることになりました。
残った我々ツア−の面々は、週末に先発隊と合流してリビエラト−ナメントに出場したり、普及のお手伝いをすることとして、その日はアヴィニヨンに泊まることになりました。
翌日はプロヴァンスの名勝めぐり【安食さん伊藤さんごめんなさいね】まず世界遺産水道橋を見物し、アルルにはいります。アルルはゴッホの町、跳ね橋やこれまた世界遺産の円形競技場を見て、ミモザのさく早春のプロヴァンスを専用バスに乗りカンヌへと向かいます。途中休憩に寄ったエクス.アン.プロヴァンスは印象派の画家セザンヌが愛した町で豊かな自然と大学のある上品な雰囲気が売り物です。2月のフランスは寒いという前評判でしたが、暖冬と好天に恵まれて我々は幸せ者でした。
地中海沿いの道をカンヌに近づくと、急に人ごみが目立つようになり、今年もだいぶ人が出ているなというのが第一印象でした。
カンヌ市長や、テレビの取材も来て成功
さて翌日【24日】ゲ−ムの祭典の行われているクロワゼット大通りのパレ.デ.フェステイバル.エ.デ.コングレ(カンヌ映画祭の会場でもある)に出かけました。我々のブ−スには、フランス将棋連盟の去年の顔ぶれのほかに、アルサスのオズモンドさんが真ん中に陣取って普及の先頭に立っており女流も和服姿で通訳ゴルジュさんの助けを借り、熱心に普及活動をしていました。
一方リビエラト−ナメントは参加者が少なめでちょっと物足りない感じでしたが、こちらは、ポテイエさんが中心で小生も遠路スウエ−デンやイタリアからきた参加者のお相手をしたり、ふらり立ち寄った日本人に3手詰め5手詰めの説明をしてすごしました。
ハイライトは、カンヌの市長が立ち寄ってくれて女流との写真におさまりましたが、これも和服の効果でしょうか?また地元の子供向けテレビ局が取材に訪れ、安食さんにインタビュ−をしたり、けなげな安食さんは指導将棋やQ&Aに大活躍でした。
シェイモルさんから駒の動かし方を習って嬉しそうなこどもたち
25日が最終日ですが、今年は昨年にもまして人出が多く、(その後約12万人と発表されました。)また通常のゲ−ムのサイトのはかに、有料のアニメのコ−ナ−が開設され、また新しいブ−スとして数独が設けられたりして、日本文化が大いに幅を利かせてきた感じを受けました。
世界は日本に対し、尊敬とまでは言いませんが、日本の食文化や漫画など日本人の日常生活の中の事象に関心を持つようになっており、昔の物珍しさから出発した日本趣味とは一味違う、次のステップのような気が致します。カンヌ市がめざとくアニメなどに着目、市をあげて祭典を盛り上げようとする姿勢が感じられました。このブ-ムが残っているうちに将棋の普及に努めたいものと思いました。
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