8月エリックさんと将棋を指す(9号、1998.12.31)
私はエスぺランチストなので、毎夏世界のどこかの都市で一週間にわたって開催される世界エスペラント大会に、仕事に支障のない限り参加することにしている。 この機会を利用してもう一つの趣味である将棋を現地の強豪連と指すことを無上の楽しみにしている。(上田友彦)
今年の開催国はフランス(ただし開催地はパリではなく南フランスのモンペリエ)だったので、早い時期から彼らとコンタクトを取ることに努めた。なぜならフランス人は長期のバカンスを取ることをかねがね聞き及んでいたからである。
フランスとのやり取り
語学力の貧弱な私のことだから(したがってエスペラントをやっている)、まず日本人の世話役に当たるような人を探すのが最善手と考え、『将棋年鑑』の海外支部名簿に掲載されているフランス支部責任者の山本桂さんに手紙と資料を5月早々に送付した。しかし1ヶ月以上経っても返事がない。
ISPS役員の鈴木良尚さん、会員の木下恒さんから、フランスではエリック・シェイモルさんが最も強く、'97年度アマ竜王戦に招待されたこと、彼の住所、電話番号等を教えてもらった。電話は言葉の面で自信がないし、英語で手紙を書くのもおっくうに感じていたところ、丁度折り良く『かけはし7号』でエリックさんの「私の日本旅行記」を読み、山田編集長から彼のE-mailアドレスを聞くことができた。
たどたどしい英語でメールを送ったところ、早速返事が返ってきた。山本桂さんは転勤のため、今はニースに住んでいる。上田の指定した8月10日(月)はwork dayなので、丸一日は休めないが何とか時間を作りたい。友人であり2番目に強いフランス人のフレデリック・ポチエさんはその頃日本にいるだろう。パリ在住の最強者はおそらく日本人の宮本豊一さんだろう。といった文面で宮本さんのE-mailアドレスも書き添えられていた。
その後宮本さん、エリックさんと数回メールを交換した後、いよいよ8月10日エリック4段との対局が実現することになった。
ロビーで対局
エリックさんとJEPIC欧州事務所次長の宮本豊一さんはこの日のために半日休暇を取ってくれた。場所は私の宿泊先のフランツールパリリヨンホテルロビー、申し分のない対局場であった。同行の大阪の同志大浦さんが参加されたので、2局同時進行が可能となった。エリックさんと私が最も多く当たるよう取り計らわれた。エリックさん自ら盤、駒、チェスクロックを2セット持参されるという熱の入れようだった。
双方45分づつの持時間、それが過ぎると1手30秒未満という条件で、彼とは都合4局指すことができた。正味8時間休憩なしに、将棋漬けの至福の時を味わった。双方秒を読まれながら、激戦が展開されたが、結果は4局とも私の辛勝に終わった。彼は最新の棋譜も良く調べており、居飛車党の本格派である。私もほとんど飛車は振らないので、相懸り、矢倉模様からの急戦、横歩取り、ひねり飛車と息の抜けない白熱の序盤戦となった。中盤までは終始押されぎみで、辛くも終盤で逆転というケースが3局あった。宮本さんとも一局指したが、私の勘違いからあっけなく負けてしまった。宮本さんは3年間のヨーロッパ勤務を終え8月には帰国されるとのことである。日を改めて宮本さんとはじっくり指したいと思っている。
エリックさんは素敵な将棋のホームページを開いており、これを読むと毎週パリ近郊のクラブで将棋が指され、全ヨーロッパでも大きなイベントがかなり頻繁に開催されているのが見て取れる。訪欧の機会のある同好の志には是非都合をつけて、彼らと親善試合をされんことを強くお薦めする次第である。
エリックさんのホームページ、Eメールのアドレス
URL: http://eric.macshogi.com/index.html
E-mail: site-eric@macshogi.com
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