北尾女流初段のパネルトーク(10月9日、於、東京工業大学くらまえホール)

 皆さんこんにちは。わたしは今ご紹介にあずかりました「どうぶつしょうぎ」というものを使って毎回いろんな方に将棋を楽しんでもらおうと思って、普及活動をしております。ただですね、「どうぶつしょうぎ」を広めるのは、もともとすごく好きな将棋を全く知らない人に、たくさんの人に知ってもらいたいという思いで作ったんであって、海外に「どうぶつしょうぎ」を持っていくときは必ず将棋盤もい一緒に持って行って、今日、和服で来ましたけれども、このような格好をして、教えに行っています。

 それは日本の将棋というものをすごく愛していて、それをたくさんの人に知ってもらいたいという気持ちでいますので、海外に行くときにも必ず日本的な文化として、日本の格好で、日本の漢字で書かれた駒をいっしょに持っていって、まず導入部分としてこのどうぶつしょうぎを楽しんでもらえればという風に思っています。

 今日、来る前にパワーポイントを初めていじって作ってみようと思ったんですけど、ここのちょっとパソコンとかみ合いませんで、写真で説明させていただきます。本日いらっしゃっている方の中で「どうぶつしょうぎ」をまだご知らないという方もいらっしゃると思いますので、ちょっとだけ説明なんですけれども、これはですね、わたしが、子どもたちに教えるために、全く将棋というものを知らない人たちに教えるためにつくったミニゲームです。3x4という小さな盤、普通の将棋ですと9x9の81マスあるんですけど、このしょうぎは12マスしかありません。その中に、いま、写真が小さくてわからないかもしれないんですけど、上がお空、下が森、というふたつのエリアがあります。そして、4匹の動物が出てきます。ライオンと象とキリンとひよこ、そして、そのなかで一番強いライオンさんが将棋でいう王様にあたります。要は将棋の駒を動物化したものと考えて頂ければいいんですが、これは、このかわいい絵を描いてくれたのが先程ご紹介に預かりました女流棋士の藤田さんなんですね。藤田さんは将棋を小さいこどもに教えるためにすごいかわいらしいイラストにした、でも、教えるときにですね、内容がやっぱり将棋なので、一局が長くて教えるのが大変だった、ということを言っていました。わたしは、将棋を教えるときにですね、よく、自分で子ども教室をやっていて、そこに、たとえば、4歳の子とか来るんですね。その子たちに教えるときに、もちろん漢字を教えるとか大変です。でも、駒遊びをしていると、そのうち、一応名前くらいは覚えてくれるんですね。なんとなく図形として子どもたちは認識するので、覚えていく。さあ、じゃあ、本将棋に移ろうかというときに、一局がすごく長いんですね。わたしの教室はだいたい一時間くらいでやっているので、一時間かかっていると将棋って終わらないわけですよ。だからなるべくコンパクトにした、短くって、楽しくって、最後までできる将棋を作りたいなと思ってこれを作りました。

 ルールなんですけども、普通の将棋と同じような感じで、特徴的なのは、もともと盤の真ん中で駒がぶつかっているところですね。さきほどから何回も出ているように、将棋というのは他の国の似た将棋とは違いまして、取った駒を使えるということがあります。取った駒を使えるということでですね、まず駒を取らないと始まらないわけですね。将棋の駒をまず取るということが、普通の将棋の並べ方だと、なかなか取るまで至らない、何手も動かしていかないと取れないですね。それで、この「どうぶつしょうぎ」の場合は最初から歩と歩を、ひよことひよこをぶつけてみました。だから最初から取る楽しみが味わえるということですね。で、取った駒を仲間にする。相手のひよこさんをつかまえて、またその仲間を戻していくんですけれども、外国に行くと、どうしてもチェスでは捕まえた駒を殺してしまうという文化があって、日本人はですね、大将だけ殺して後は生かしていくということになるんですけれども、取った駒を使うということに海外ではすごく抵抗があるような感じがしていたんですね。ですがこれを動物に置き換えることによって、これが新しい仲間になるんだよ、という表現をすると皆さん割と受け入れやすく、受け入れていただけるようです。

 少しあの、海外に行った写真をお見せしようと思って持ってきたんですけれども、たとえば、これは今年2月にカンヌに行って教えてきたときの写真です。やはり今日のように和服を着て、多面指しをしているんですけれども、あちらの方々はすごく日本の文化に興味があります。特に今フランスは日本ブームで、たとえば来る女の子たちが日本のファッションにすごい興味があったりする、たまにはコスプレをしていたりとか、日本のマンガを持っていたりとか、そんな感じで来てくれる子がいるんですけれども、そのこたちはまず「どうぶつしょうぎ」を見て、それでルールを知って、その後にですね、本当の将棋をやりたいって言ってくれるんですね。漢字の文化にすごく興味があるので、まずは導入部分として将棋の、「どうぶつしょうぎ」で覚えるんですけれども、その次、すぐに、この本物の、漢字の日本の駒を使いたいという風にいってくれて、何度も遊びに来てくれます。奥のほうにも女の子が何人も居ると思うんですけれども、女性の方が興味を持ってくれるとすごく嬉しいなと思っています。それからこのカンヌのゲーム祭ですごくわたしが驚いたことがあってですね、四日間行われるんですけれども、そのうち一日目、二日目あたりが小学校の遠足のコースになっています。それで小学校の先生がこどもたちを引率してつれて来るんですね。いろんなゲームのブースに立ち寄って、私たちがいた将棋のブースは周りがチェスだったり、チェッカーだったり、麻雀だったり、囲碁だったり、いろんな伝統的なゲームが置いてあるスペースだったんですけれども、そこに子どもたちが立ち寄って、それで将棋を楽しんでいってくれました。それは、日本では将棋を単なるゲームとして捉えがちなんですけれども、フランスのほうではおそらくゲームをすることが子どもの教育にすごく役立つと考えられているのではないかなと思います。将棋は礼儀も学べますし、相手との対戦でコミュニケーションを取りながらいろいろなことを学ぶことができる、もちろん思考能力も養える、そういった意味で、もっともっと将棋が教育に取り入れてられていけばいいのにな、と願っています。

 えー、「どうぶつしょうぎ」の話をメインにしようと思っていたのですが、ついつい将棋の話ばかりになってしまいました。「どうぶつしょうぎ」も向こうの子どもたちにすごく人気で、小さい子どもがやってくれています。この写真は新聞にも載せていただいたんですけれども、本当に小さな女の子、四歳くらいだと思います。それと、こちら手前側に居るのがお母様、親子二人で「どうぶつしょうぎ」を楽しんでくれている写真です。「どうぶつしょうぎ」はですね、絵にしたので言語依存がないということで、どこの国でも受け入れてくれるということがあるんですね。どこの国に行ってもライオンさんですとか、ひよこさんですとか、子どもにはイメージがつく、でも、このルールは将棋というものを損なわないように、なるべく将棋に準じた、たとえば、取った駒が使える、ひよこが相手の陣地にまですすんでいったらくるりとひっくり返ってにわとりになるのですが、これは歩が進んでいってと金になることを表しています。動きも全く同じです。なので、「どうぶつしょうぎ」という名前をつけて今日本では本屋さんで売っているんですけれども、海外にいってもやはり同じ「どうぶつしょうぎ」という名前で売ったり、説明したりしています。これは凄くわたしのなかのこだわりなんですけれども、いろんな方に「アニマルチェス」っていったほうがいいんじゃないかっていうことを言われるんですけれども、これは自分では絶対に言わないって決めていて、やっぱり「しょうぎ」ということばを世界に広めたいという気持ちがあるんですね。それで「どうぶつしょうぎ」まあ「アニマルしょうぎ」でもいいかなとは思うんですけれども、「しょうぎ」という言葉を必ず残したい、世界中でも「柔道」ということばはどこでも通じると思います、「相撲」だって「歌舞伎」だって通じると思うんです。なので、将棋という言葉を海外に普及していくときに、このライオンさんの絵のついた将棋を「どうぶつしょうぎ」として名前を覚えてもらえたら、本当の将棋はどういうものだろう、日本の将棋はどういうものだろう、と、そういう風にゆくゆく興味を持ってくれれば嬉しいなと思っています。でも、そこまでのことを最初から求めるのは大変ですので、まずはこう敷居を下げて、手に取りやすい、かわいらしい絵のついた、おもちゃとしての将棋を世界中の子どもたちに知ってもらうということが一番最初の道かなと思っています。

 最後に会社のことが少し出ましたので、少しだけいわせてください。わたしは今年の2月に将棋を普及する会社「ねこまど」というのを立ち上げました。そのねこまどの理念はですね、標語みたいになっているのがあるんですけども、「将棋をもっと楽しく、親しみやすく、世界へ」と、最後に「世界へ」をつけてあります。これは知らない人に将棋を教えていくというのは、日本国内でももちろんそうなんですけれども、海外でも同じ敷居の低さというのがあったほうが、一番、何も知らない人に教えていくのが、一番スタートのラインがですね、それは日本でも海外であっても別にそれは変わらない、だから、なるべく多くの人にこの将棋というものを、皆さんに知ってもらいたいという気持ちで立ち上げています。それで、今日少しお配りしているんですけれども、フリーペーパーの駒doc. というのがあります。その駒doc. という冊子はですね、誰にでも、将棋を知らない方でも楽しんでいただけるようにということで、無料で配布している冊子ですので、よろしかったら一部お持ち帰りになってください。そのなかに「英語でどうぶつしょうぎ」というコーナーがあります。また、世界中のひよこたちといて、例えばひよこを世界各国の言葉で表現するとか、そういった多言語化の一番最初のスタートとなるようなページも入れています。そういった活動一つ一つが将棋と世界をつなぐ、将棋で世界をつないでいく、盛り上げていく、ということになっていければいいなということを思っています。まとまらないんですが、このあたりでわたしの話を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

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