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2011年11月18日 (金)

GoSensations.comのヨーロッパ将棋チャンピオンJean Fortinさんのインタビュー

 GoSensations.com という世界中の囲碁の愛好家が読んでいるサイトに、3期連続して将棋のヨーロッパチャンピオンになり、ISF2011の各国代表戦でも優勝したフランスのJean Fortinさんのインタビュー(英文)が載りました。Fortin さんは将棋を覚える前にチェスや囲碁もやっていて、KGS サーバーで囲碁をよく打っていたことから、このサイトで将棋のインタビューが実現しました。非常に興味深い内容のインタビュですので、日本語に訳してお伝えします。

Fortin_mirnik

ISF2011の各国代表戦、左が Fortinさん、右は Mirnikさん(ドイツ)

2011年11月12日 GoSensations.com 'Expert', DanielTom氏によるインタビュー(翻訳 ISPS理事 寺尾学)

An interview with Jean Fortin, the European Shogi Champion

ヨーロッパ将棋チャンピオンのJean Fortin さんにインタビュー

まず最初に、今年のヨーロッパ選手権での勝利おめでとうございます。決勝戦でのBoris Mirnik さん(ドイツ)との対戦は非常にタフな戦いだったと聞きました。どんな印象でしたか。

ありがとうございます。決勝戦で、私の相手は、局面を駒交換が起こりやすいようにして素速く攻める決断をしていました。ただ、囲いが半端だったために、私は終盤で勝ちを見つけられました。

GoSensations.comの将棋に慣れ親しんでいない読者のために将棋を紹介していただけますか。チェスとの将棋の大きな違いは2つあって、持ち駒利用のルールがあることと、将棋はチェックメイトの速度競争のようなものだと聞いています。それで合っていますか。

 将棋は古くからあるゲームです。チェスと同様に、将棋の元はチャトランガです。おっしゃるとおり、チェスとの主な違いは持ち駒利用のルールで、取った駒を盤上に戻して、自分自身の駒として使うことができます。このルールによって、終盤はチェスとかなりの違いが出ます。なぜなら、駒の数がまったく減らないからです。終盤の攻撃を止めることはほとんど不可能で、ついには相手玉を詰ます競争となります。これにより、将棋は非常にダイナッミックで面白いゲームとなっています。

日本が将棋が一番強い国というのは本当ですか。

ええ、まったくそのとおりです。日本では将棋は囲碁やチェスより人気があります。囲碁と同様に彼の地ではプロ棋士による協会組織が発展しています。プロ棋士は大きなタイトルをかけて戦います。名人になることが、最も名声を集めることです。

あなたは将棋のトレーナーについたのですか。それとも独習したのですか。

独習しました。インターネットで対局をして、レベルの高い対局を観戦し、本を読みました。

チャンピオンになるには、切望、献身、決断力、集中力、および、勝利への意志が必要だといわれていますが、それらのうちのどの要因が最も重要だと信じていますか。また、それ以外の要因がありますか。

   最も大事なのは献身だと思っています。チャンピオンになるには、夢を満たすために必要なレベルに到達するように訓練すること、何度も何度も対局を重ねることが必要です。

ちょっとここであなた自身の所以を理解するためにできたら教えてください。あなたのボードゲームへの情熱はどこから来るのでしょう。いつ、それらを紹介されたのですか。

いつもボードゲームが好きでした。こどものときにチェスを習い始めました。父とよく指したものです。小学校のころから、チェスクラブに通い、トーナメントに参加し始めました。

将棋に力を入れようと決めたのはいつですか。

 マンガの「ヒカルの碁」に将棋について描いてあるのを読んだ後のある日に、自分が何に惹かれているのかよくわからないまま、衝動的に将棋を始めました。最初は、駒の漢字にびくびくしながらでしたが、将棋のダイナミズムが心から好きになりました。そして間もないうちに、インターネットで沢山の対局をこなすようになり始めました。

いくつかの国では、チェスが必修科目として学校で教えられています。そのことをどう思いますか。義務教育の科目としてボードゲームを紹介するのは有益なことと思いますか。

私は、ボードゲームが必修科目になるべきとは思いません。子供時代に(家族によって)あるゲームを強制的に練習させられた人を見てきていますが、彼らはそのゲームにいい感情を持たなくなります。ただ、学校の教室ではゲームの紹介だけにとどめて、その先はクラブでというのはいいと思います。

 連続して3期将棋でヨーロッパチャンピオンになったことは、どんな感じですか。

  3度勝てたことは非常に嬉しく思っています。将来は日本を訪れて将棋の世界に触れ、日本のトーナメントに参加できればいいかもしれないなと思っています。

ボードゲームのほかには、どんなことをするのが好きですか。

ボードゲーム以外には、音楽を聴いたり、ギターを弾いたり、読書したり、などなどたくさんあります。

次からは GoSensations.com読者からの質問です。

 Jokep (AT): 1) I often hear that Shogi is easier that Go ... can you comment on that? 

Jokepさん(オーストリア)から (質問1)よく将棋は囲碁よりも簡単だと聞くのですが、それについては。

囲碁のルール自体はとても簡単です。しかし、初心者がそれがどんなゲームなのかを、経験に富んだ人に基本的な考え方を示してもらうような手助けを得ずに理解するのは難しいです。一方、将棋はルールを学ぶのは駒の種類と動きを覚える必要があるため少し複雑ですが、ゲーム自体の考え方は単純で、相手の玉を取ることです。しかし、私の考えでは、どちらのゲームも初心者の段階を抜ければ、非常に深く、複雑で、興味深いものです。

(質問2) もうひとつ、囲碁についての Oskar Korscheltのテキストで読んだのですが、将棋では、持ち駒を使うことができるために、チェスのように先を読むことはできないのでしょうか。

将棋では、可能な持ち駒の利用を全部計算にいれないといけないので、チェスよりも少し先を読むのは難しくなります。ただ、それは不可能でまったくできないことかというとそうではありません。実際、経験に富んだ将棋のプレイヤーはしばしば20手以上になる詰将棋を解くトレーニングを行っています。

質問3)囲碁のプレーヤでチェスを習いたいと思っている人へのアドバイスがありますか。

ええと、なんとお答えしていいか、、、。自分は、チェスの後に囲碁を覚えて順番が逆なので。

FoUwさん(フランス)から:質問1、3つ、もしかするとそれ以上の異なるタイプのボードゲームをやっていて、混乱するようなことはないのですか。

それぞれのゲームは違いがあるので、混乱するようなことはありません。チェスと将棋の駒は見た目がかなり違いますし、囲碁は全然別のゲームです。

(質問2)慣れ親しんだゲームが既にあると、他のボードゲームをプレイするのはより間単になりますか。それはどんな類の有利さでしょうか。

チェスも、囲碁も、将棋もすべて最善手を選ぶための思考プロセスは似通っているところに特徴があります。候補手に対して、相手のベストの答えを想像し、そして自分の最善の答えをみつけ、その局面の評価を試みる、などです。従って、ひとつのゲームを既にやっていることが通常ほかのゲームを覚えるときに助けになります。さらにいうと、一つのゲームからもう一方のゲームへ、概念が持ち込まれることがあります。囲碁において「先手を維持すること」は将棋においても役立つのが一例です。

(質問3) 世界、ヨーロッパ、フランスで将棋のコミュニティはどのくらいの大きさなのでしょうか。ヨーロッパの成長は速いですか。

将棋は日本では非常に広まっています。しかしながら、残りの世界ではたくさんは指されていません。ヨーロッパで大きな将棋大会はおおよそ100人規模ですが、囲碁やチェスの大会に比べてはるかに規模が小さいです。このところ、フランス国内では将棋クラブの数が、とても活動的なプレイヤーがいるおかげで、目立って増えてきています。それでも、囲碁やチェスに比べればごく小さな規模に留まっています。

(質問4)ヨーロッパの人が将棋の対局をするサーバーはありますか。

81dojoというヨーロッパのプレイヤーにとってユーザーフレンドリーなサーバーがあります。いくつかの言語に翻訳もされていて、お望みなら、西洋風の(シンボルの)駒と、伝統的な漢字の駒を選んで習うことができます。それは、Hidetchi によって開発されています。彼は YouTube で将棋を英語で学ぶためのたいへん興味深いビデオシリーズを作っている日本人プレーヤーでもあります。 http://www.youtube.com/playlist?list=PL587865CAE59EB84A 

(質問5)気に入っているボードゲームはなんですか。

すべてのボードゲームが好きですが、このところは、チェスよりも将棋と囲碁をたぶん好みがちですね。

Noheiさんからの質問:あなたの意見では、感覚面、印象面、および、熱中できる度合いの点で、どのゲームが最も深いですか。また、対手や駒・石に関してはどのゲームが一番深いでしょうか。

  わたしは「最も深いゲーム」があるとは思いません。チェスも囲碁も、将棋もすべて非常に深いゲームです。

 noth1ingさんから (質問1) なぜ将棋は囲碁、チェス、チェッカー、ブリッジ、チャンギと並んで世界5大マインドゲームに入っていないのですか。

囲碁、チェス、チェッカー、ブリッジはとても国際的なゲームです。将棋はほとんど日本で指されています。しかし、将棋が含まれている国際的なマインドゲームのイベントもありました。

(質問2)将棋においてコンピュータのレベルは。

唯一のコンピュータとプロ棋士との対局は、人間の将棋に終わりました。しかし、コンピュータは非常に早く進化をしています。

Breakfast:さんから。 (質問1) 日本将棋連盟によって、日本のプロ棋士は公開の場で将棋のコンピュータプログラムと対戦することが許されていません。囲碁やチェスでも同様なルールを受け入れるのはいい考えだと思いますか。

チェスでは、既にコンピュータが人間のベストのプレーヤーと同等の強さか、それ以上であることは既に証明されてきたことです。将来は将棋や囲碁でも同じことが起こることは避けられないでしょう。プロ棋士がコンピュータと対戦することを禁じてもそれが変わることはないと思います。

(質問2)ヨーロッパの将棋大会ではどのくらいの賞金が出るのですか。

ヨーロッパでは、将棋は純粋にアマチュアのレベルで指されており、ヨーロッパ選手権を含め、ほとんどの大会で賞金はありません。

(質問3)将棋の大会で指すだけ、ないし、将棋を教えるだけで食べていくことはできますか。それとも他の収入源が必要ですか。

ヨーロッパでは将棋で食べていくことはできないと思います。

(質問4)あなたと、日本のトッププロとの差はどのくらいですか。

私は最近、羽生二冠と飛車落ちで対局しましたが負かされました。差はまだまだ非常に大きいです。

WinPoohさん(ロシア)からの (質問1) お気に入りのチェスプレーヤーは誰でしょう。過去では、また、現代のグランドマスターの中では誰になりますか。また同じ質問を囲碁と将棋についても。

多くの棋士が好きです。誰がお気に入りかといわれるとちょっと選べません。ひとついえることは、ゆっくりとしたポジショナルなゲームよりも、混沌として落とし穴の多いゲームが好きということです。

(質問2)将棋のプレーヤーはコンピュータのプログラムをトレーニングと準備に使っているのですか。

ええ、データベースは利用可能で、広く使われています。

Aokameさんからの質問。(質問1) 将棋を始めたのはいつですいか。また、なぜ将棋に一番傾倒しているのですか。

将棋を始めたのは4年前です。非常にダイナミックな手筋に魅了されました、将棋をより理解し、早くうまくなるために、以来ほとんど将棋を指してきています。

(質問2)囲碁やチェスは将棋の読みを改善するのに役に立っていますか。もしそうなら、どの程度ですか。

はい、囲碁もチェスも私の将棋に役立っています。先にも答えましたが、囲碁やチェスの多くの手筋や考え方が、将棋にも応用可能なのです。その逆もまた真なり、です。少なくとも私は、将棋を習った後にチェスが顕著に上達した人をひとり知っています。

(質問3) 将棋における「定跡」について簡単に説明願えますか。違いはどこにあって、ハメ手も含まれるのでしょうか。

 

将棋における定跡は囲碁のそれとは少し異なっています。なぜなら、将棋は盤の一部の手順というよりは盤面全体の手順になるからです。将棋の定跡は、チェスの序盤の研究により似ています。囲碁やチェスのように、ハメ手もいくつかあります。定跡は絶えず進化しています。毎年新手が指されています。

(質問4) ヨーロッパの将棋のレベルはアジアと比べてどうでしょう。

ヨーロッパの将棋のレベルは、日本のプロ棋士のレベルとは段違いです。アマチュアでは、その差はそれほどではありませんが、しかし、日本の一番強いアマチュアは、ヨーロッパのそれを上回っていると思います。

(質問5) もし私が始めるなら、どのプロ棋士を見逃すべきではないでしょうか。現在と過去において

羽生二冠が最初に頭に浮かびます。彼の棋風は非常に創造的で、たいへん興味深く、また、彼だけが同時に7大タイトルを制覇したことのあるプロ棋士です。

(質問6)われわれの選んだゲームに上達するためのアドバイスが何かあれば。

対局し続けましょう。そして、一局一局を楽しみましょう。

(インタビュー終わり)

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