北尾女流初段のパリ・カンヌ訪問レポート
2月の末からパリとカンヌで将棋の普及旅行をされてきた北尾女流初段からレポートをいただきました。将棋を世界に広める会では、企画の段階から相談に乗り、また、カンヌの「ゲームの祭典」での日仏通訳を手配することで、北尾女流初段と、同地で合流した藤田麻衣子女流1級の普及活動の効果の最大化を図りました。以下が北尾女流初段からのレポートです。
<レポート開始>
世界に将棋を広める会 御中
2010年3月19日
北尾 まどか
2010年フランス・将棋普及レポート
2月27日~3月8日、フランスのパリとカンヌにて将棋の普及を行ってまいりました。
将棋を世界に広める会の寺尾様、ピノー様には、企画段階から多大なるご協力をいただきありがとうございました。フランス将棋連盟に送っていただいた「どうぶつしょうぎ」をカンヌのゲーム祭のブースにて紹介したところ大変好評で、イタリア将棋連盟の方がイタリア語訳を作成してくれたうえに、まとめ買いしてくださったり、後日スペイン語訳を送ってくださった方がいたり、感動の連続でした。
日本将棋連盟には普及用盤駒と仏語パンフレット100セットずつのご提供をいただきました。(1)28日のパリイベントにて参加者全員に配布。(2)カンヌのゲーム祭で将棋ブースに来場した地元小学校の先生方に配布。(3)残りは、フランス将棋連盟の方々に、普及に使ってくださるようお願いして寄贈してきました。
2/28 in Paris「将棋とチェスの出会い」(仏題Rencontre shogi et echecs)
パリ国際大学都市の日本館にて、日本文化としての将棋を紹介するイベントを在仏日本大使館主催で開催していただきました。当日は天候が悪く、参加者の出足が悪いのを心配しておりましたが、10名ほどのスタッフを別にして40名ほどの来場者がありました。
斎藤在仏日本大使夫妻と日本館の館長夫妻などもお見えになり、ご観戦いただきました。将棋の紹介をしたあと、2001年のチェスヨーロッパ女子チャンピオン、アルミラ・スクリプチェンコさんと私で、将棋とチェスの同時対局を行いました。
チェス(左)と将棋(右)の同時解説
アルミラさんは6ヶ国語を話す才女。博学で知的な文化人であり、将棋は旅行で日本に来たときに覚えたそうです。普段はチェスとポーカーのプロとして活躍しています。
将棋とチェスを二面並べて指しの対局ではお互い本業の方は15分、相手方30分という時間ハンデ戦。両者すっかり時間を使い切っての秒読み勝負になり、エキシビションながらも白熱した雰囲気がでたのではないかと思います。アルミラさんの棋風はチェスプレイヤーらしく、飛車角の動きがとても大きい将棋でした。解説は、チェスと将棋、両方の強豪として知られるフランス将棋連盟のエリックさん。2種目の解説にマイクを片手にチェスと将棋の大盤をいったりきたり大忙しです。
対局後は来場者に実際に駒に触れてもらい、自由対局を。
参加者の方からは「チェスと将棋の対比によって本当の意味での文化交流が出来たと思う」とのご感想をいただき、実りあるイベントになったと思います。来場者には日本将棋連盟様からいただいた普及用盤駒と仏語パンフレットのセットを贈呈し、会の最後に抽選会を行い、持参した将棋関連グッズや色紙をプレゼントしました。
翌3/1にアルミラさんやエリックさんと、大使公邸での晩餐会にお招きいただきました
3/4~7 in Cannes「カンヌ国際ゲーム祭」
カンヌ映画祭が開催されるパレ・デ・フェスティヴァルの広い会場の一角にフランス将棋連盟が毎年ブースを出展しているカンヌのゲーム祭。2007年に女流棋士3名が訪れたことのあるイベントです。様々なゲームが紹介されたくさんの来場者でにぎわうゲーム祭ですが将棋のブースは伝統ボードゲームのエリアにあり、周りはチェス、バックギャモン、碁、マージャンなどのブースがありました。
家族連れやカップルなど老若男女を問わず来場者は気軽に立ち寄ってゲームを楽しんでいきます。フランスでは子供の考える力を伸ばすのに効果があるとしてボードゲームが高く評価されており、ゲーム祭は近隣の小学校の課外活動コースになっています。
伝統ゲームエリアにある将棋ブース
先生に引率された小学生たちが次々とやってきました。将棋ブースでは、10面ほど並べた将棋盤はいつでもほぼ満席状態。フランス将棋連盟からは8名のボランティアスタッフが参加し、すべての机にひとりずつ付いてレクチャーをします。
私も、カンヌから合流した藤田麻衣子女流1級と一緒に「将棋」や「どうぶつしょうぎ」を教えてきました。引率の小学校の先生には「ぜひ学校で取り組んでください」とお願いして、将棋盤駒とパンフレットのセットを贈呈いたしました。
7名ほどの先生方に盤駒を贈呈しました。
フランス将棋連盟の方は皆さんとても熱心で親切で、教え上手。ちょうど日本ブームで漢字の駒に興味がある来場者も多く、教わる側もどんどん質問してとても積極的にルールを覚えてくれました。そしてカップルで相談しながらチャレンジするのもヨーロッパらしい光景です。将棋を世界に広める会(ISPS)のご協力で通訳の方が来てくださり、感想戦なども十分に行えました。また、ウィーンでのゲーム祭の主催者の方に「ぜひ将棋のブースを出してほしい」とお誘いをうけました。(考えてくれるなら、オーストリアの日本大使館に相談する、とのことです)
近年、海外では日本の文化が注目されており、将棋に対する興味もいままでとは違った目線になってきている印象でした。4日間で述べ600人がブースに来場。たくさんの方と交流することができました。
ちなみにフランスでは漢字やマンガ、そして原宿ガールなどの日本文化が大流行。漢字のかかれた洋服を着た方も多く、街を歩けばお店のディスプレイにこけしや仏像が飾られているのをあちこちで見かけました。会場でコスプレをした女の子が将棋盤を購入していったのにはビックリ。(おそらく日本のものだから、というのが主な購買理由です)
ひょっとしたら近いうちに海外で将棋ブームが来るかも?!しれません。
(なお、このふたつのイベントに関しては、週刊将棋の記事にレポートを書かせていただきました。3/24号で掲載される予定です。帰国後、共同通信にも取材を受けました)
<レポート終了(写真提供:エリック・シェイモルさん、北尾女流初段、藤田麻衣子女流1級>
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